こうして女性管理職比率の現状を見てみると、ほとんどの企業にとっての現在地と30%目標の間には大きな隔たりがある。それでは、企業はどのような目標を掲げているのだろうか。
上記と同様にTOPIX500構成銘柄で3月期決算の企業380社について確認してみると、単体またはグループとしての女性管理職比率の目標が記載されていたのは、267社、70.3%であった。そのうち人数の記載などを除き、明確に比率の目標値が記載してある企業に限定すると、その数は234社となった。女性管理職比率の目標値を5%ごとに分布状況を整理すると、以下のようになる(図2)。
図2からも理解できるように、30%以上の目標値を掲げる企業は限定的で、234社のうち47社、20.1%にとどまっていた。目標値として最多となったのは「10%以上15%未満」で、これに「5%以上10%未満」が続いていた。
この図から目標値として10%前後を掲げる企業が多いことが分かる。政府目標と整合的な目標値よりも、現状から積み上げた現実的な目標値が設定されていることが理解されるだろう。
それでは、この女性管理職比率の目標をいつまでに達成しようとしているのだろうか。
こちらも同様に、TOPIX500構成銘柄で3月期決算の380社を確認したところ、251社が具体的に目標達成設定年・年度を記載していた。その分布状況を示したのが、図3である。
なお、達成設定年・年度の表記方法は企業ごとに異なっており、ここでは年と年度をひとまとめにしている。例えば、25年と25年度は、図3中ではいずれも「2025」としてカウントされている。年の範囲は1月から12月まで、年度の範囲は4月から3月までのため若干ズレが生じるが、傾向を理解するには許容範囲と考え、このように整理した。
図3からは、2つのピークが確認できる。この2025と2030の2つのピークを合わせた値は約60%で、ここには一定の傾向性があることが読み取れる。具体的に見てみると、目標設定として最も用いられていたのは「25年・年度」で、251社のうち80社、31.9%が選択していた。次に多かったのは「30年・年度」の73社で、29.1%であった。
また「2031年・年度以降」も14社あり、比較的長期的な視点で女性管理職比率の目標を置いている企業も少なくないことが分かる。たとえ女性管理職候補が十分に育っていたとしても、管理職の現職者の定年や役職定年までの期間を考慮すると、ある程度長期的な観点で取り組み続ける必要がある。30年・年度やそれ以降の目標が掲げられていることは、こうした長期的な観点が反映されたものと理解できるだろう。
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