シルバニアファミリーだけでなく、ぬいぐるみの大人消費を誘発する大きな要因になったのは、まちがいなく「ぬい撮り」でしょう。ぬい撮りとは、ぬいぐるみを持ち歩き、いろいろな場所でぬいぐるみの写真を撮る行動を指します。
筆者がこの言葉を聞いたのは3年ほど前。当時はぬいぐるみ好きな人のマニアックな行動だったと記憶しています。それが徐々に広がり、今では一般化してきました。Instagramで調べると「#ぬい撮り」とハッシュタグが付いた投稿は341万件もあり、人気のすそ野が広がっていることが分かります。
ぬい撮りの延長線上に、新しいサービスも生まれてきています。それが「ぬいぐるみ旅行」。大事にしているぬいぐるみを預かって旅行に連れていくサービスです。
うきうきわくわく(東京都中央区)が展開している、ぬいぐるみ旅行サービス「おもちトラベル」は、ぬいぐるみだけを連れて旅行に出かける、そしてぬいぐるみが旅行を楽しむというのがコンセプトです。添乗員は、代表の片山きりんさんと、きりんさんがぬいぐるみ旅行のためにオーダーメイドしたコアラのぬいぐるみ「タピ」。
私は正直、当初は意味が分かりませんでした。「ぬいぐるみだけが旅行するというのはどういうことか」と思い、昨年実施したツアーの写真をきりんさんに見せていただき驚愕(きょうがく)しました。まさに、ぬいぐるみが旅を楽しんでいる。正確には、「楽しんでいるように見えた」のです。
写真を眺めていると、だんだんぬいぐるみに表情や性格もあるように思えてくるから不思議です。すでにツアーは20回ほど開催しており、130体以上のぬいぐるみが旅を楽しんでいます。リピーターも多く、参加者は全国各地の10〜70代と、幅広いようです。
ツアーでは途中経過をInstagramに投稿し、ぬいぐるみたちが一緒に食事をしているシーンや紅葉を眺めているシーンが見られます。ぬいぐるみたちが擬人化されており、もはやぬいぐるみというよりも持ち主の完全な分身、リアルなアバターといえるかもしれません。きりんさんは「ぬいぐるみは子どものものだよね、という先入観を持っている方も多いと思いますが、すでにぬいぐるみは大人のものになり始めているのです」と話します。
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