秘書検定にITパスポート……「資格沼」から抜け出せない、どうしたら?Q&A 働き方のお悩み相談

» 2024年01月30日 07時00分 公開
[川上敬太郎ITmedia]

新連載:Q&A 働き方のお悩み相談

働き始めて間もなく10年、中堅社員として責任ある業務も任されるようになった。さらなるステップアップを目指したいけれど、何をすればいいのだろう。仕事も大事だけれど、プライベートも大切にしたい――。

キャリアアップ、ワークライフバランス、リスキリング……どうすれば自分が納得できるキャリアを歩めるのか。中堅ビジネスパーソンが抱く悩みに、長年、多くの人の働き方を見つめアドバイスしてきたワークスタイル研究家の川上敬太郎さんが回答する。

Q:「資格沼」から抜け出せません。秘書検定やITパスポートなど、さまざまな資格試験に挑戦し取得できたのですが、業務に生かせないでいます。もしかすると、たくさんの資格を取ることで安心したいだけなのかもしれません。どうしたらいいのか教えてください。

「資格沼」から抜け出せない。どうすればいいのか。写真はイメージ(ゲッティイメージズ)

著者プロフィール:川上敬太郎(かわかみ・けいたろう)

photo

ワークスタイル研究家。1973年三重県津市出身。愛知大学文学部卒業後、大手人材サービス企業の事業責任者を経て転職。業界専門誌『月刊人材ビジネス』営業推進部部長 兼 編集委員、広報・マーケティング・経営企画・人事部門等の役員・管理職、調査機関『しゅふJOB総研』所長、厚生労働省委託事業検討会委員等を務める。雇用労働分野に20年以上携わり、仕事と家庭の両立を希望する主婦・主夫層を中心にのべ約50000人の声を調査したレポートは300本を超える。NHK「あさイチ」他メディア出演多数。

現在は、『人材サービスの公益的発展を考える会』主宰、『ヒトラボ』編集長、しゅふJOB総研 研究顧問、すばる審査評価機構 非常勤監査役の他、執筆、講演、広報ブランディングアドバイザリー等の活動に従事。日本労務学会員。男女の双子を含む4児の父で兼業主夫。


資格なんて意味がない? 専門家の回答は

A:資格はハードスキルとして生かせない場合でも、ソフトスキルとして生かすことができます。

 資格にはさまざまな種類があります。中でも、就職などにも有利で資格自体が仕事のメリットに直結する分かりやすい事例が“業務独占資格”です。弁護士や公認会計士、医師など、その資格を持つ人以外は携わってはならず、業務を独占的に行うことができる国家資格のことを言います。

 他にも保育士や栄養士のように、有資格者以外はその名称を名乗れない“名称独占資格”などもありますが、それら資格を持っているだけで業務に生かせる資格は、残念ながら多くありません。民間資格を含めて、そのほとんどは取得していなくても業務に支障はなく、就職で有利になるとも言い切れないものです。

 そう聞くと「それなら、資格なんて取っても意味がない」と思うかもしれません。

 確かに、持っているだけで業務に生かせる資格となるとほんの一握りです。しかし、業務に全く生かされない資格というのもほとんどありません。

 業務に生かされるスキルには、大きく2つ種類があります。職歴・技術・知識など客観的に評価しやすいハードスキルと、コミュニケーション力や企画力、マネジメント力など定性的で素養として人の内面に備わっているため、客観的には評価しづらいソフトスキルです。

 資格自体はハードスキルに分類されますが、持っているだけで高く評価されやすい資格となると業務独占資格などほんの一部に限られます。しかしながら、どんな資格でも取得するために一生懸命勉強した経験や、試験に合格した事実は消えません。

 資格を取ろうとしたこと自体「向上心」があることの証明になります。また、試験勉強を続けることで「継続力」が磨かれ、合格までやり切ることで「目標達成力」や「実行力」なども身に付きます。これらは全てあなた自身の素養として備わるソフトスキルとなっているので、既にあらゆる業務に携わる中で無意識のうちに生かされています。

写真はイメージ

 また、資格を取得する中で得た知識自体はハードスキルです。秘書検定やITパスポートなどももちろん立派な資格ですが、業務独占資格などと比較すると持っているだけで評価される場面は少ないかもしれません。

 しかし、秘書検定を取得して得た知識は、職場の改まった場面での応対やメール、チャットなどでの適切な言い回しの中で生かされています。ITパスポートの取得で得た知識であれば、職場が取り組むDX推進の意義を深くくみ取れたり、IT用語が出てきても「何それ?」とならず、すんなり理解して業務を進められる、といった具合に生かされているのではないでしょうか。つまり、あなたのビジネスパーソンとしての実力が向上しているということです。

 あなたが所持した資格は誇るべき努力の証であり、資格取得前の自分より確実に成長していることを客観的に示してくれる認定書でもあります。

 資格そのものを業務に生かせるかどうかよりも、資格の取得を通じて素養を磨き、知識を得ることで成長した自分自身を、業務の中でどう生かすかの方に目を向けてみてはいかがでしょうか。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.