富士急行が念願の「箱根」進出 将来的には?(2/3 ページ)

» 2024年01月30日 10時23分 公開
[産経新聞]
産経新聞

事業譲渡を契機に

 富士急は山梨県の大月市と富士吉田市や富士河口湖町を結ぶ私鉄「富士急行線」やバスなどの運輸業、別荘地管理などの不動産業、遊園地やホテルなどのレジャー・サービス業の3つが主力事業となっているが、そのほとんどは富士吉田市、山中湖村など山梨県の富士北麓エリアに集中していた。

 これに、静岡県で富士南麓エリアでのレジャー事業、熱海沖の初島でのリゾート事業、神奈川県で相模原市の遊園地などを加えたが、箱根地区は老舗旅館が強いことや、小田急・東急グループと西武グループが激しく交通シェアを争った「箱根山戦争」が長らく繰り広げられ、富士急に入り込む余地はなかった。

 だが、西武グループが新たな長期戦略で事業ポートフォリオの組み換えを打ち出したことで、転機が訪れる。令和4年に箱根と熱海の中間に位置し、富士山を望む大パノラマが楽しめる十国峠のパノラマケーブルカーなどを取得。5年には芦ノ湖で遊覧船事業も得るなど2年連続で事業を譲り受けた。すでに十国峠では新たに富士急プロデュースのグランピング施設を追加し、拡充を図っている。

photo 2月に就航する芦ノ湖遊覧船の新船「SORAKAZE」(箱根遊船提供)

 高級感やプレミアム感のある観光地として高く評価していた念願の箱根の足掛かりを手にした富士急は、箱根での事業を自社のノウハウに取り込むことで、富士急の観光での高付加価値化が図れるとみている。西武グループから箱根関連事業の譲渡が続くことも予想されるが、堀内社長は「そういった話があれば歓迎だが、今は“新参者”なので、まずは観光で富士北麓よりも洗練されている箱根の流儀を学んで溶け込むことが重要」とのスタンスを崩さない。箱根で信頼を獲得し、存在感を示すことが次の譲渡案件にもつながるとの見方だ。

copyright (c) Sankei Digital All rights reserved.