きっかけはパソナ 話題の店と有名シェフが淡路島に集結 「美食観光」ニーズが追い風に長浜淳之介のトレンドアンテナ(4/6 ページ)

» 2024年02月03日 05時15分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

「人っ子一人歩いていない」場所がにぎわうまで

 パソナグループに匹敵する勢いで、西海岸の殺風景だった場所に圧倒的なにぎわいをもたらしているのがバルニバービだ。同社は1995年、大阪の南船場にオープンしたカフェ「Hamac de Paradis(アマーク・ド・パラディ)」がヒット。98年にオープンした2号店「CAFE GARB」も人気を博し、人通りが少なかった南船場に若者を呼び込み、先進的なカフェやダイニングの集積地に発展させた実績を持つ。創業者で同社会長の佐藤裕久氏は「南船場の仕掛け人」と呼ばれてきた。

バルニバービのGARB COSTA ORANGE

 そのノウハウを応用して、2011年から東京の蔵前や両国などの23区東部エリアに着目し、同様のにぎわいを創り出している。大都会の中心から少し外れた、さびれたシャッター街を活性化させることに長けている同社であるが、郊外の案件を手掛けたのは16年にオープンした滋賀県大津市のJR大津駅に直結する商業施設「ビエラ大津」のキーテナント「ザ・カレンダー」が初のケースだった。カフェ・レストラン・カプセルホテル・BBQテラスなどを集結させた複合店である。

 バルニバービのグループ会社、バルニバービ オーガスト(兵庫県淡路市)の取締役・井上隆文氏は「淡路島に店を作るといい出したときは『人っ子一人歩いてない場所に、いったい誰が来るのか』と社員でも疑問に思った」と振り返る。

 バルニバービと淡路島との最初の接点は、食材の調達だった。十数年前から各地の良い食材を探している中に、淡路島産品もあったという。同社広報によれば「淡路島から調達する量が大きくなってきて、淡路島に出店したらどうかという発想に至った」とのことだ。

 GARB COSTA ORANGEは19年4月のオープン。水平線に沈むオレンジ色の夕陽が望める海辺に位置し、約300席を擁する。特に島外向けへの宣伝をしなかったが、日商で平日20万円、休日に40万円が売れれば良いと考えていたにもかかわらず、初月から100万を超えていて驚くほどの反響があった。自転車やバイクツーリングで来店する人も多く「来店した人がSNSに投稿してくれて、大きな集客となったのではないか」と、井上氏は感謝している。

オーシャンビューのテラス席があるGARB COSTA ORANGE
テラスからはサンセットも眺められる(出所:プレスリリース)

 GARB COSTA ORANGEの料理はイタリアン。大阪・天神橋で予約の取れない店として知られた「il cipresso(イル・チプレッソ)」出身の高島朋樹シェフが腕を振るう。地元の食材を重視し、野菜はシェフが島内の産地直売所を駆け巡って仕入れる。

 「淡路島」と名前に入っているメニューが人気で、地元のものを食べたい顧客ニーズが明確だ。顧客単価は2000〜2500円で、若い女性のグループやカップルが多い。コロナ禍では「密」を避けられる換気の良いテラス席が充実していたことで、同店など淡路島の店舗がグループ内で好調だったという。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.