きっかけはパソナ 話題の店と有名シェフが淡路島に集結 「美食観光」ニーズが追い風に長浜淳之介のトレンドアンテナ(2/6 ページ)

» 2024年02月03日 05時15分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

淡路島に集結する有名シェフたち

 人口約20万人の地方都市ながら、美食によって成功した随一の都市に、スペイン北東部・バスク地方のサン・セバスティアンがある。近ごろ流行した「バスク風チーズケーキ」誕生の地でもある。サン・セバスティアンは、ガストロノミーツーリズムで活性化を試みる世界の諸地域にとって、目標とすべきアイコンだ。

 実は淡路島には、フーディ―ならば名前を聞けば驚く、著名なレストランのシェフが集結してきている。レストランの質・量ともに淡路島は「日本のサン・セバスティアン」に最も近いといえる位置にまで、ここ10年ほどで急速に伸びてきた。

 ここからは、美食による地方創生から世界的な美食の島へと飛躍しようとしている、淡路島のレストラン事情を見て行こう。

 淡路島西海岸が、休日ともなれば各レストランの前で交通渋滞を引き起こすほどの食のメッカとなったきっかけは、パソナグループが廃校になった野島小学校をリノベーションした「のじまスコーラ」が12年にオープンしたことだろう。

 のじまスコーラは、カフェ・レストラン・ベーカリー・淡路産品の物販・ミニ動物園などを集積させた複合施設で、飲食は淡路産の食材をメインに使っている。施設内にあるイタリアンレストラン「リストランテ・スコーラ」は、山形県鶴岡市でガストロノミーツーリズムを実践する、イタリアン「アル・ケッチァーノ」の奥田政行シェフがプロデュースした関西初の店だ。同店では、瀬戸内海を望む洗練された空間で、淡路島産の魚介や野菜、淡路牛などを堪能できるようにしている。

のじまスコーラには動物園も(出所:プレスリリース)

ハローキティ関連施設も続々とオープン

 のじまスコーラの成功をきっかけに、パソナグループでは14年にはちみつを使った料理を出す「ミエレ」を、すぐ近くの海沿いにオープン。17年には、兵庫県立淡路島公園内にゴジラやドラゴンクエストなどの世界を体験できる、日本初の体験型エンターテインメントアニメパーク「ニジゲンノモリ」を開設した。パーク内のメインレストラン「モリノテラス」は、東京・六本木で素材の持ち味を最大限に引き出す“新和食”で人気を集める「HAL YAMASHITA」の山下春幸シェフがプロデュースしている。

 18年にはハローキティの世界観を体験できるシアター・ショップと、山下シェフがプロデュースした創作オリエンタルレストランを備えた「HELLO KITTY SMILE」をオープン。19年はショーと食事が楽しめるシアターレストラン「HELLO KITTY SHOW BOX」、22年にもリンゴ型のプロジェクションマッピングや食事が楽しめる「HELLO KITTY APPLE HOUSE」を合わせてAWAJI HELLO KITTY APPLE LANDを形成している。

18年にオープンしたHELLO KITTY SMILE(同前)

 4施設を複合した青海波は20年8月にオープン。演劇、ミュージカル、アニメ、落語などの公演・興行を開催する約190席の劇場「波乗亭」が核となっている。劇場以外のやや高級なレストランとして、和食「青の舎」と洋食「海の舎」と、10年以上熟成させた古酒を集めたショップ&バー「古酒の舎」のバーは、山下春幸シェフがプロデュースした。

パソナグループのレストランを多数プロデュースしている山下春幸シェフ

 この他にも、パソナグループが経営する淡路島の商業施設・店舗は、全部合わせて15カ所ほどあり、島の活性化に大いに貢献している。

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