リテール大革命

結局、店員が常駐……日本の「もったいないセルフレジ」 米小売業との決定的な違いは?がっかりしないDX 小売業の新時代(2/3 ページ)

» 2024年02月08日 07時00分 公開
[郡司昇ITmedia]

顧客体験の向上に不可欠な「操作手順の自由度」

 米小売大手のWalmart(ウォルマート)やTargetでは、セルフレジの操作中にアプリの会員バーコードを登録するという日本と同様の操作も可能ですが、別のルートも存在します。印刷されたレシートの下にバーコードが記載されてあり、それをアプリで読み込むことによって購買履歴を加算することができるようになっています。

 例えば、レジ設置場所の電波が悪くバーコードが出ないためにクレームになることは、日本の小売業でも多発しているトラブルです。後でも購買情報を取り込めるし、ポイントなども獲得できる仕組みを入れることによって、レシートだけ取っておいて電波の良い状況になってから登録するであるとか、家族の購入分も登録するといったことができるわけです。選択肢があることは、顧客にとってはメリットが大きい仕組みです。出来の悪いアプリはレジ前でログアウトしていて「イラっ!」とすることが多発しますが、そんな時の救済措置があるのです。

 また、小売企業から見ると、より多くの購買情報を会員番号に紐づけることができるという点で、CRM(顧客関係管理)の点でも有効な手段と考えられます。

写真はイメージ(ゲッティイメージズ)

スキャン漏れと万引きをなくす方法

 先日、X(旧Twitter)で、セルフレジを米国の一部店舗で止める動きがあると報じた記事が話題になりました。理由はここまで書いたように、万引きとスキャン漏れの増加です。

 一方、世界最大手の食品スーパーマーケットKroger(クローガー)がAI活用において半導体・AI開発企業のNVIDIA(エヌビディア)社と提携する動きもあります(関連記事)。

 NVIDIAは本社内に最新のAIラボを開設しました。ここでは同社開発の小売企業向けソフトウェアを活用して「デジタルツイン」(現実空間のモノや環境に関する情報をデジタル化し、仮想空間上で同じように再現する技術)を開発。店内に設置したカメラから、売り場や商品、顧客に関するさまざまなデータを収集し、デジタルツインでのシミュレーションを通じて、店舗業務の改善につなげています。

 買物体験の向上については、同社とEverseen(エバーシーン)社が開発したAIとコンピュータービジョンをベースとしたプラットフォームをセルフレジに統合しています。リアルタイムで顧客のスキャン状況を録画し、AI分析を行うシステムを取り入れているのです。

 この最新型のセルフレジでは、青果などバーコードのない商品も画像認識によって瞬時にスキャンできるほか、正しく商品がスキャンされなかった場合は来店客とレジ担当の従業員の双方に警告メッセージが発信されるといった機能が搭載されています。とくに後者については、警告を受けた来店客の75%がすぐにスキャンをやり直すという結果が出ており、スキャン漏れや万引きの抑制に大きく貢献しています。記事によると、クローガーはすでに、このセルフレジを1700店舗に導入しているとのことです。

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