デジタル技術を用いて業務改善を目指すDXの必要性が叫ばれて久しい。しかし、ちまたには、形ばかりの残念なDX「がっかりDX」であふれている。とりわけ、人手不足が深刻な小売業でDXを成功させるには、どうすればいいのか。長年、小売業のDX支援を手掛けてきた郡司昇氏が解説する。
本連載では直近2回にわたり、リテールメディアについて書いてきました。今回はその手段の一つである陳列棚の前面につけるコンパクトなデジタルサイネージ「シェルフサイネージ」に焦点を当ててみたいと思います。
シェルフサイネージでは、陳列された商品の価格だけでなく、商品の詳細情報やプロモーションコンテンツなどを限られたスペースで訴求することができます。
紙の値札を上回る大きな訴求効果がありそうですが、実は使い方次第では結果に結びつかないケースもあります。今回は、実際のシェルフサイネージ活用の失敗例と成功例を紹介してみたいと思います。
20代で株式会社を作りドラッグストア経営。大手ココカラファインでドラッグストア・保険調剤薬局の販社統合プロジェクト後、EC事業会社社長として事業の黒字化を達成。同時に、全社顧客戦略であるマーケティング戦略を策定・実行。
現職は小売業のDXにおいての小売業・IT企業双方のアドバイザーとして、顧客体験向上による収益向上を支援。「日本オムニチャネル協会」顧客体験(CX)部会リーダーなどを兼務する。
公式Webサイト:小売業へのIT活用アドバイザー 店舗のICT活用研究所 郡司昇
公式Twitter:@otc_tyouzai、著書:『小売業の本質: 小売業5.0』
食品スーパー中心の小売業としては世界最大の売上高を誇る企業が米Kroger(クローガー)です。KrogerはMicrosoftと提携し「EDGE」(エッジ)というシェルフサイネージを2019年1月に始めました。筆者は設置翌月の19年2月にシアトルの設置店舗に行って体験してきました。
EDGEは小型のデジタルサイネージ機能を持ったプライスレールです。
商品名と価格が記されたいわゆる値札を「プライスカード」(棚札)といい、それに加えて商品特性やセール情報などを盛り込んだ一回り大きな値札を「POP」(Point of purchase advertising:販売時点広告)と言います。
それらを差し込む機能を持ちつつ、商品の倒れ止め機能を兼ね備えたものをプライスレールと言います。通常透明なプラスチックで出来ていますが、これがデジタルサイネージになっているのがEDGEです。
電子プライスカード(電子棚札)同様に、セールなどでの価格変更時の手間を減らす機能もあります。
これまでになかったEDGEの画期的な機能は、顧客がスマホの専用アプリから買い物リストに入れた商品について、その売り場に顧客が近付いた際に、顧客ごとに設定されたマーク(写真ではバナナ)を表示して陳列場所を知らせるというものです。
Kroger(QFC)の会員アプリと、レジで精算せずに買い物ができる「Scan&Go」アプリを連携させることで、会員アプリの買い物リストを取り込んで売り場案内機能が使えます。
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