リテール大革命

ヤクルト購入率が爆上がり 陳列棚をDX「シェルフサイネージ」の威力とは?がっかりしないDX 小売業の新時代(4/4 ページ)

» 2023年12月08日 07時00分 公開
[郡司昇ITmedia]
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シェルフサイネージで購入率が伸びたヤクルトの事例

 筆者は小売業のDX支援をする傍ら、IT企業が持つ技術を小売・流通に活用するアドバイザーもしています。

 契約先企業の一社に「人に寄りそう合理化で、世界をもっと自由に、もっとゆたかに。」をミッションとするゴウリカマーケティング(旧コニカミノルタマーケティングサービス)があります。EDGEやLe Pickの視察もこの会社の方々と一緒に視察・研究しました。

 同社のAIを活用した顧客行動分析サービス「Go Insight」を活用して、ヤクルト本社が成果を上げた事例があります。

 ヤクルト本社では以前は、来店客の視線を追跡するアイトラッキング分析とPOS分析を中心に、売り場の最適化を提案していました。この分析により、商品の配置や色の使用に関する具体的な提案が可能でした。

 このような分析を通じて実績は上がりましたが、解明できなかった点もありました。例えば「(冷蔵オープンケースのゴールデンゾーンは最下段と言われているが、実際に最下段と下から2段目の接触回数にどの程度の差があるのか」といった疑問です。このような疑問を解決するためにGo Insightで調査を実施しました。

 調査では、立ち寄った人数、滞在時間、手に取った商品数などを分析。これにより、特定の商品の配置変更が売り上げ向上につながることが明らかになりました。仮説に基づいた配置変更により、ヤクルト商品の売り上げが114%、乳酸菌カテゴリー全体は116%に向上しました。

商品棚に立ち寄った人数、滞在時間、手に取った商品数などを分析することで特定の商品の配置変更が売り上げ向上につながると判明した(ゴウリカマーケティング公式Webサイトより)

 その後、シェルフサイネージなどの資材を利用した効果検証も行いました。資材設置の前提として「最近の顧客は乳酸菌飲料を選ぶ際、乳酸菌が含まれているだけでなく、確かな効果や効能を求めている」という調査結果がありました。

 サイネージ設置後、ヤクルト商品購入者の平均滞在時間が約4秒伸びました。これはシェルフサイネージによる視認性の向上と関心・興味の引き付けによるものと考えられます。また「ヤクルト ジョア」や「プレティオ」などが機能的な商品として認識されたことで、購入率が大幅に伸びました。

シェルフサイネージ設置後、ヤクルト商品購入者の平均滞在時間が約4秒伸びた(ゴウリカマーケティング公式Webサイトより)

 このケースにおいては「最近の顧客は乳酸菌飲料に機能を求めている」という調査結果に基づいた仮説があったことが重要と考えます。機能を訴求するワンポイントメッセージを短時間で切り替えることで目をひいて、売り場の滞在時間を増やすと共に購買に結びつけたのです。

 たった3.8秒と思う人もいるかもしれませんが、乳酸菌飲料売り場の滞在時間は(店舗と状況にもよりますが)15秒程度なので、2割以上増えています。この増加分はシェルフサイネージで効果的なコンテンツを見せることができた影響です。

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