デジタル技術を用いて業務改善を目指すDXの必要性が叫ばれて久しい。しかし、ちまたには、形ばかりの残念なDX「がっかりDX」であふれている。とりわけ、人手不足が深刻な小売業でDXを成功させるには、どうすればいいのか。長年、小売業のDX支援を手掛けてきた郡司昇氏が解説する。
小売店舗において「品出し」の次に作業の割り当て時間が多いレジ作業の改善は、収益改善に結びつく可能性が高く、デジタルとリアルを組み合わせた工夫がまだまだ可能な領域です。待ち時間や店員の対応など、レジは顧客の不満が最もたまりやすい場所でもあります。
レジの形態によっては、こうした不満を解消し、「ついで買い」を促すことで大幅な売り上げ増につながるケースもあります。今回からは、そんな「レジ」の在り方について、筆者が米国で見てきた小売大手Walmart(ウォルマート)の先進事例なども交えて紹介したいと思います。
20代で株式会社を作りドラッグストア経営。大手ココカラファインでドラッグストア・保険調剤薬局の販社統合プロジェクト後、EC事業会社社長として事業の黒字化を達成。同時に、全社顧客戦略であるマーケティング戦略を策定・実行。
現職は小売業のDXにおいての小売業・IT企業双方のアドバイザーとして、顧客体験向上による収益向上を支援。「日本オムニチャネル協会」顧客体験(CX)部会リーダーなどを兼務する。
公式Webサイト:小売業へのIT活用アドバイザー 店舗のICT活用研究所 郡司昇
公式Twitter:@otc_tyouzai、著書:『小売業の本質: 小売業5.0』
来店客が商品をレジに持ってきて決済する。実はこのシーンは、店舗小売業における顧客の不満が最も多く発生する瞬間です。
不満を分類すると、大きく以下の5つに区分できます。
(1)時間への不満 「レジで長時間待たされた」
(2)不公平感 「私より後に並んだ人を先に会計した」
(3)接遇への不満 「店員の釣り銭の渡し方が……」「店員のあいさつがない」
(4)配慮不足 「袋の詰め方が……」「サイズが……」
(5)店舗不満吐露 「価格表示が違う」「欲しい物がない」「値段が高い」……
このうち(5)は、店舗の各所で発生した不満を、たまたま人がいるレジで主張しているだけなので、レジ自体の不満からは除外します。
レジ前の並び方には、大きく分けて「並列並び」(パラレル並び)と「一列並び」(フォーク並び)の二つの形式があります。
並列並びは、各レジに直接並び、レジそれぞれから列が発生します。食品スーパーやGMS(総合スーパー)の食品部門は客数が多いため、この並び方が多く見られます。
並列並びの弱点としては、並びが短いと思ったら前の客がトラブルを起こしたという時や、レジ担当者が慣れていなくて遅い時に感じる不公平感です。これを解消する目的で各並びの先頭で、2つのレジに振り分ける店舗が増加しています。客や従業員が少ない時間にレジを閉めることもやりやすい合理的な手法です。
当たり前ですが、レジが1台しかない飲食店では並列並びにはできません。
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