新時代セールスの教科書

営業不振な状態で、上司の「進捗どう?」 ガッカリ部下にならないための返答は営業コミュニケーション大解剖

» 2024年02月09日 08時30分 公開

Q: 営業成績があまり良くない状況で、上司から進捗確認をされました。上司の心証を悪くしないために、報告時に避けるべきことはありますか?

A: 十分な成果が出ていない状況での営業報告は、自分自身も焦りを感じているでしょうし、上司からの追及も厳しくなりがちです。焦りから、普段は出ないような言い訳が口から飛び出してしまうリスクも増えます。その中でも特に上司からの心証を悪くするような言い回しを2つ紹介しますので、これらはぜひ意識して避けるようにてください。

営業成績があまり良くない……上司からの進捗確認になんて返事すべきか?(画像:ゲッティイメージズより)

(1)自社製品・サービスの仕様のせいにする

 営業担当者として、競合他社とのコンペに敗れたとき、自社の製品やサービスに不満を感じることは自然なことです。しかし、営業報告で製品の弱点について言及するのは避けるべきです。これらの問題点は、生産や開発部門にフィードバックとして伝えるべき内容であり、直接営業報告で取り上げることは適切ではありません。営業担当者としては、製品の問題点を批判するのではなく、改善を促すための建設的な提案を行うことが重要です。

 ただし、例外的な状況もあります。商談の中で具体的な根拠を示せる場合、価格設定やオプションなど、社内での意思決定だけで変更可能な要素については、要望を出してもよいでしょう。重要なのは、製品やサービスを否定するのではなく、その魅力をより効果的に伝えるための改善点を提案することです。営業担当者として、自社製品の価値を高め、顧客に魅力を感じてもらうためのアプローチを考えることが求められます。

 このような対応は、営業の現場での挑戦と捉えることができます。営業担当者には、市場の変化や競合他社の動向を常に把握し、自社製品の強みを最大限に生かしながら、改善の余地がある部分については適切なルートを通じて提案することが求められています。このプロセスを通じて、製品やサービスの品質向上に貢献し、結果として営業成績の向上にもつながることでしょう。

(2)社内の営業支援部門やパートナー企業の不手際のせいにする

 営業活動の成果には、マーケティング、インサイドセールス、バックオフィスなどさまざまな部門のサポートが不可欠です。しかし、これらの部門が効果的でない施策を展開している場合、営業成績の不振をその部門のせいにしたくなることもあるでしょう。特に、各部門が異なるKPI(重要業績評価指標)を設定している場合、その結果、営業活動に直接関連しない業務が増え、営業活動が妨げられていると感じることもあるかもしれません。

 しかし、営業報告でこうした状況を訴える際には、他の部門やパートナー企業の失策を責めるような表現は避けるべきです。たとえ事実であったとしても、他部門の不手際を指摘する言い方は良い印象を与えず、建設的ではありません。より効果的なアプローチは、まず自分が他部門からのサポートを最大限活用できていなかったことを認め、その上で、より効果的なサポートや施策の実施を要望することです。これには業務フローや具体的な施策の提案を含めると良いでしょう。

 営業報告で他部門の問題点を指摘するのではなく、どのようにして全体の業務効率を高め、営業活動を支援するための提案をするかが重要です。部門間のコミュニケーションを改善し、互いのニーズを理解し合うことで、より効果的な協力体制を築けます。営業担当者としては、自部門だけでなく、他部門とも連携し、会社全体の成果に貢献することが求められます。

 このようなアプローチは、単に問題を指摘するのではなく、解決策を提案することに重点を置いています。他部門の助けを得るためには、まず自身の責任を認め、次に具体的な改善策を提示することが重要です。これにより、全体としての業務の効率化と、営業成績の向上を目指せるでしょう。

筆者プロフィール:水嶋 玲以仁 グローバル・インサイト合同会社 創設者兼CEO

インサイドセールスの実務全般について、20年に及ぶ経験を持つ。そのうち16年間は、世界有数のIT企業でBtoB及びBtoCのインサイドセールス、営業チームの発展と管理業務に携わる。(Dell で7年、 マイクロソフトで6年、Googleで3年)。その後、JTB、NEC、ソフトバンクなど日本企業のコンサルティングの実績を持つ。著書に「インサイドセールス究極の営業術」(ダイヤモンド出版)「リモート営業入門」(日経文庫)「実践営業デジタルシフト」(日本経済出版)。


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