ワールドの24年2月期第3四半期決算は、売上収益が約1654億円(前年同期比5.1%増)、税引前利益が約140億円(同26.5%増)で、こちらも好調をキープしている。既存店売上は23年12月まで22カ月連続で前年超過を達成するなど、成長が続く。
決算短信によれば、好調の要因として「今まで以上にお客様とのより強いつながりを構築するため、マルチチャネル化やOMO(Online Merges with Offline、オンラインとオフラインの融合)戦略を推進することで、新たな機会を通じた関係構築へ積極的に取り組んでおります。このほか、世界的な物価上昇や円安の為替動向に左右されないよう、自社工場体制を生かした国内生産への回帰も着々と進めております」と述べ、顧客との接点強化や国内生産へのシフトなど、事業再構築の成果が出てきた旨が記されている。
ワールドのマルチチャネル化で成果が上っているのが、百貨店ブランド「TAKEO KIKUCHI(タケオキクチ)」。全国に113店あるタケオキクチだが、百貨店からショッピングセンター(SC)に販売チャネルを拡大中だ。
SCでは「ららぽーとTOKYO-BAY」(千葉県船橋市)、「ららぽーと海老名」(神奈川県海老名市)、「MARK IS みなとみらい」(横浜市)、「アミュプラザ長崎」(長崎市)などに出店し、いずれも好調という。百貨店より顧客単価は安いが、ファッションビル向けジーニングカジュアルの姉妹ブランド「tk.TAKEO KIKUCHI」の商品を意図的に取り込んだり、カバン・財布など雑貨を強化したりするなど、売り場を工夫して販売数の増加分でカバーしている。
地方では、SCに押されて百貨店の閉店が相次いでいる。今年に入ってからも、1月14日に島根県唯一の百貨店だった、松江市の一畑百貨店が閉店。1月31日にも愛知県一宮市の名鉄百貨店一宮店が閉店。愛知県は名古屋市以外で百貨店が成り立ちにくくなっている。他のブランドも横展開しながらSCへとシフトしていく戦略だ。
オンワードホールディングスの24年2月期第3四半期決算も、売上高が約1413億円(同8.4%増)、経常利益約90億円(92.7%増)と、やはり好調である。決算短信によれば「商品マーチャンダイジングを柔軟に行ったことに加え『クリック&トライ』サービスを導入したOMO型店舗の運営力が一層向上した」と、同社も事業の再構築が奏功した。
柔軟なマーチャンダイジングというのは、例えば暖冬ならウールコートはあまり売れないが、カーディガンなら売れる。こうした状況を見て、フレキシブルに品ぞろえしていくことを指す。
また同社では20年2月から、ABEJA(東京都港区)の「ABEJA insight for Retail」という顧客分析サービスを活用。「any FAM(エニィ ファム)」「any SiS(エニィ スィス)」「Feroux(フェルゥ)」の3ブランド・旗艦店4店の顧客分析を始めた。
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