百貨店を主たる販売先とする大手アパレルの業績が、急回復している。ワールド、オンワードホールディングス、三陽商会といったちょっと“アッパー”な洋服を得意とする企業群が、軒並み復活しているのだ。
コロナ禍が沈静化してきて行動制限がなくなり、外出を控えていた人々が街に繰り出すことで、時代に合った、新しいおでかけ用の服のニーズが高まっている。冠婚葬祭への出席も久しぶりとなれば、3〜4年前の服が合わなくなり、買い換えるケースも多い。企業がリモートからオフィスへと働く場所を戻す動きもあり、ビジネスユースの服の需要も高まっている。
コロナ禍の期間中はユニクロ、しまむら、ワークマンなど、日常使いのファストファッションばかりが売れていた。ここに来て潮目が変わり、アッパーミドルのブランドにも勢いが出てきた。
それを裏付けるように、日本百貨店協会が発表した2023年12月の「全国百貨店売上高概況」によれば、全国の百貨店72社・180店の売上高総額は約6465億円、5.4%増(前年同月比、以下同)となった。売り上げの増減率は、22カ月連続プラスとなっている。コロナ前の19年比でも3.2%増と回復が顕著だ。
商品別売上高では、衣料品は7.2%増、特に婦人服・洋品は11.4%増と好調ぶりが目立っている。子供服・洋品は3.6%増。紳士服・洋品は回復が遅れ0.3%減だった。
顧客別では、シェア7.4%のインバウンドが、円安効果などから122.6%増となっており、3カ月連続で単月としての過去最高額を更新した。
地域別では、10都市(札幌・仙台・東京・横浜・名古屋・京都・大阪・神戸・広島・福岡)が7.4%増と伸びた。特に、福岡12.7%増、大阪11.4%増、札幌10.8%増の2桁増が目立った。売り上げの約3割を占める東京は6.2%増だった。広島だけは例外的に8.3%減だった。
10都市以外は0.5%減と回復が遅れている。特に東北では7.9%減と減少幅が大きかった。
以上が概況だが、好調な百貨店アパレルで象徴的なのは、三陽商会の黒字転換だ。23年2月期決算は売上高約582億円、経常利益が約24億円。経常黒字は実に7期ぶりであった。
コロナ禍以前から三陽商会は不振だった。15年6月に「バーバリー」とのライセンス契約が打ち切られ、15年12月期の売上高は前年の約1109億円から約974億円へと、1割以上が減少。経常利益は約103億円から約70億円へと3割も減少し、16年12月期には80億円を超える経常損失を出している。
その後、代わりのブランドを懸命に育成しているうちにコロナ禍が来てしまい、さらなる苦境に陥っていた。一つの強力なブランドに依存する恐さを、まざまざと見せつけられた感がある。
好転しているのは三陽商会だけではない。ワールドの23年3月期決算は、売上収益が約2142億円、税引前利益が約103億円となった。売り上げは前年に比べて25.0%増、税引前利益は前年より631.6%増と大幅に伸びた。コロナ禍を乗り越えて復活したと見て良いだろう。
オンワードホールディングスの23年2月期決算は売上高が約1760億円、前年比で4.5%増と、それほど目立って伸びたわけではない。しかし、経常利益の約53億円は、なんと前年比で948.7%増と激増。利益体質への改善が進んでいる。
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