脱毛サロンや貸衣装など、事前に代金を受け取ってからサービスを提供する「前受金ビジネス」の事件を耳にするようになった。財務諸表に前受金(前受収益を含む)を計上した企業は、どのくらいあるのか。
東京商工リサーチが2022年10月期〜23年9月期に決算を迎えた28万4575社を対象に調査した結果、5万1678社(18.1%)が前受金を計上していることが分かった。また、総負債に対する前受金の比率が50%以上の企業は1259社(構成比0.4%)だった。
商品を引き渡す前に代金を受け取る前受金で資金調達を実施する企業は、借入依存度が低く、また有利子負債構成比率も比較的低いことから、優良企業に見えやすい。業績を伸ばしてキャッシュを積み上げる優良企業も確かにあるが、過度に前受金に依存する企業もあり、顧客が減少すると手元資金がひっ迫する事態になりかねない。
業種別で総負債に対する前受金の比率(以下、負債前受金比率)を算出すると、全企業における負債前受金比率は1.2%だった。負債前受金比率のトップは「貸衣裳業」(61.3%)で、全業種のうち唯一50%を超えた。18年、成人の日に全店舗で営業を停止した「はれのひ」も貸衣装業だ。
2位は「外国語会話教授業」(41.7%)。07年10月に業界シェアの6割を占めた「ノヴァ」が、負債439億円を抱えて会社更生法を申請して話題となった。
東京商工リサーチは「消費者が契約内容を十分に理解した上で契約に臨むことは当然重要だ。だが、前受金ビジネスの被害者を出さないためには、企業の情報開示の徹底と同時に、前受金の保全措置を義務付けるなど、消費者を守る仕組み作りが欠かせない」とコメントした。
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