スポーツカーはいつまで作り続けられるのか マツダ・ロードスターに見る作り手の矜持高根英幸 「クルマのミライ」(5/5 ページ)

» 2024年02月25日 06時00分 公開
[高根英幸ITmedia]
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日本の道路交通は多様化が進む

 クルマは、その国の経済や産業の発展ぶりだけでなく、文化レベルを表しているものの一つだ。道路を見て、どういうクルマがどのように走っているか見るだけで、その国のクルマに対する捉え方、扱われ方が分かる。

 1億総中流社会と言われていたころはトヨタの「マークII」3兄弟が飛ぶように売れ、「クラウン」のエンジンが2.8Lから3Lに変わり、エンブレムしか変わらないのに買い替えたような時代だった。

 今は販売されるクルマの半分が軽自動車で、残りの大半はミニバンとSUV。その一方で、ロールス・ロイスやフェラーリは過去最高の売れ行きを示している通り、収入の格差は広がっている。

休日のパーキングや幹線道路では新旧の趣味性が高いクルマを見かけることが珍しくない

 スポーツカーはその狭間で生き長らえてきた、絶滅危惧種のようなクルマである。マツダがロードスターを作り続け、トヨタとスバルが「GR86/BRZ」「スープラ」を作り上げ、ダイハツはコペンを、日産はフェアレディZを存続させたことで、スポーツカーの市場はなんとか確保されている。

 それに現在でも旧車の人気が高いことは、今の新車市場が物足りないと思っている層が一定以上存在することを意味している。クルマは燃費や居住空間だけで評価できるものではないからだ。

 すでに休日には最新のEVと燃料電池バス、1970年代のスポーツカーが同じ道路を走るほど、クルマが多様化しているのが現在の姿だ。当分はこの混沌としたクルマ社会が続いていくため、自動車を取り巻くビジネスも複雑さを極めていくことになりそうだ。

筆者プロフィール:高根英幸

 芝浦工業大学機械工学部卒。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。これまで自動車雑誌数誌でメインライターを務め、テスターとして公道やサーキットでの試乗、レース参戦を経験。現在は日経Automotive、モーターファンイラストレーテッド、クラシックミニマガジンなど自動車雑誌のほか、Web媒体ではベストカーWeb、日経X TECH、ITmedia ビジネスオンライン、ビジネス+IT、MONOist、Responseなどに寄稿中。著書に「エコカー技術の最前線」(SBクリエイティブ社刊)、「メカニズム基礎講座パワートレーン編」(日経BP社刊)などがある。近著は「きちんと知りたい! 電気自動車用パワーユニットの必須知識」(日刊工業新聞社刊)、「ロードバイクの素材と構造の進化」(グランプリ出版刊)。


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