なぜクルマは高くなってしまったのか 高額化に恩恵を受ける人も高根英幸 「クルマのミライ」(1/5 ページ)

» 2023年12月15日 09時52分 公開
[高根英幸ITmedia]

 軽自動車でも200万円を超える価格が珍しくなくなってきた。軽自動車だけではない。輸入車も国産車も昨今、軒並み価格が上昇している。クルマの価格は10年前と比べて、どれくらい高くなっているのか。代表例を挙げてみよう。

 ベーシックカーとして、トヨタ「ヤリス」と13年前の「ヴィッツ」(2世代前)を比較してみると、ヤリスのガソリンエンジン・FF(前輪駆動)では中心となるグレード「X」の1.5L車は185万7000円だ。それに対してヴィッツは1.3Lの「U」が141万2000円と、44万5000円も安い。

 3割も価格が上昇しているのも驚きだが、ベーシックカーの中間グレードが185万円もするのは、かなり高い印象だ。

コンパクトカーの代表的車種、トヨタ・ヤリスはガソリンエンジン車でも10年前のヴィッツと比べると3割高くなっている

 ヤリスのベースグレードは1Lエンジンの「X Bパッケージ」からだが、これでも139万5000円と、ヴィッツ「X」の107万1000円と比べてやはりほぼ3割、値段が上昇している。しかもカタログ燃費の計測方法が変わっていることもあるが、実質的に燃費はほとんど変わっていない。

 ヤリスの1L車は営業用として利用されることが多い車種だ。価格上昇は企業の必要経費が増えることで利益を圧迫することになるから、うれしい話ではない。それでも営業車が老朽化して外出先で立ち往生などしようものなら、営業機会の損失の方が大きくなる。一定のサイクルで営業車を入れ替えざるを得ないのだ。

 人気のミニバンでも比較してみると、トヨタ「ノア」の「X」8人乗り・FFでは、現行モデルが267万円であるのに対し、10年前の同グレードは209万円。やはり3割近く価格が上昇している。

 前述のヤリスを社用車として使う企業の事情と同じことは一般ユーザーにも言える。車検整備に多額の部品交換費用をかけるくらいなら、新型車に買い替えて高い信頼性と先進性を確保したいという心理が働くことになる。

 だが気になるのは価格上昇の理由だ。車両価格を設定するのは自動車メーカーの自由としても、従来車種やライバルメーカーの車両に比べて価格に見合った内容でなければユーザーには受け入れられない。また、価格が上昇すればライバルメーカーの車両と比べて売りにくくなるという側面も販売店側には生じるのではないだろうか。

 装備が豪華になる一方の高級車は当然として、ミニバンやSUVでも、ここ10年で価格が上昇しているのは、やはり理由があるのだ。

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