「クルマのボディサイズ」が大きくなっている、これだけの理由高根英幸 「クルマのミライ」(1/5 ページ)

» 2023年09月28日 08時57分 公開
[高根英幸ITmedia]

 日本の乗用車は大きく分けて3種類に分類されている。排気量660cc以下の軽自動車と、2000cc以下の小型自動車と2000cc以上の普通自動車だ。エンジンの排気量だけでいえば、この分類となるのだが、それぞれの規格にはボディサイズも規定されている。

 軽自動車は全長3.4m、全幅1.48m、全高2mまでであり、小型自動車は全長4.7m、全幅1.7m、全高2mまで、普通乗用車は全長12m、全幅2.5m、全高3.8mまでがサイズ規定だ。つまりエンジンの排気量にかかわらず、軽自動車や小型自動車はサイズが規定を超えてしまうと上位規格に繰り上がる。

 なぜこのような規定があるのか。昔は乗用車は贅沢(ぜいたく)品であり、所有できる人が限られていた。こうした状況が続いていたが、政府は経済を活性化させるために、誰もが持てるクルマを自動車メーカーに開発、生産させるように働きかけた。販売価格を抑えるために、エンジン排気量やボディサイズなどに制限を加えたのだ。

 その後、道路交通が整備され小型自動車や普通自動車が高性能化していったのと同じように、軽自動車もエンジン排気量やボディのサイズアップを幾度か行なってきた。

軽自動車規格は日本独自のもので、新興国ではエンジンやボディをサイズアップしたものが導入されているが、日本では税制面での優遇から軽自動車規格の撤廃を求める声も海外メーカーから挙がっているだけに、これ以上のサイズアップは難しい

 それでも軽自動車規格はここ25年は見直されておらず、排気量もボディサイズも前述の数字が維持されている。というのもこれ以上排気量やボディが大きくなるとコンパクトカーとの差がほとんどなくなってしまい、税制面で優遇されている軽自動車の存在意義が薄れてしまうからだ。

 ただでさえ軽自動車という日本独自の制度は、海外の自動車メーカーから輸入障壁と見なされており、かつては欧州自動車工業会から撤廃を要求されたこともある。まあ自国の産業を優遇するのは、米国や中国のほうが露骨であるから(昨今のEV車優遇を見れば明白)、それは当然のこととして、軽自動車はこれ以上大きくすることが難しい。

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