復活できなかったオーサムストア フライング タイガーとどこで差がついたのか長浜淳之介のトレンドアンテナ(4/5 ページ)

» 2024年02月27日 05時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

広がっていったオーサムストア包囲網

 100円よりも安価な雑貨を一定数そろえたオーサムストアの出現は、ダイソーなど100円ショップチェーンをあわてさせた。均一価格では将来的に通用しないと考えた各社は、頑なに100円均一を死守するセリアを除き、200円・500円・1000円の商品にもチャレンジ。100円均一に固執するファンをつなぎ止めつつも、商品ごとのコストパフォーマンスを追求するショップへと、この頃よりビジネスモデルを転換させている。

 これら均一価格ショップは、スマホの機能を拡張するアイデアグッズやアウトドア関連などで、100円でない高額商品のヒットが出るようになった。商品のアイデアと品質で、オーサムストアと同等か、それ以上のものが登場してきたのだ。

 例えばダイソーは、21年3月に渋谷へ新業態となる、300円の価格帯を中心としたスタンダードプロダクツを出店。この店が評判となり、出店を進めた。それだけでなく、スタンダードプロダクツとダイソー、さらに元からあった女性向けの300円ショップである「スリーピー」との3店複合ショップをも展開し始めた。商品ラインアップを大幅に強化した3店複合の大型店は十分にオーサムストアの脅威になり得た。

複数業態を併設した店舗も増やしているダイソー(出所:プレスリリース)

 300円ショップのスリーコインズも、同様の戦略を取った。価格帯の幅を広げたスリーコインズプラスの全国展開を進め、21年11月には広大な売場面積を持つ原宿本店をオープン。オーサムストア本拠地のお膝元をふらつかせた。

 運営元のパルグループホールディングス(大阪市)は16年、日鉄住金物産から雑貨ブランド「ASOKO」を買収しており、スリーコインズプラスのインショップとして、展開を進めている。

スリーコインズプラスで販売されているASOKOの商品(出所:スリーコインズ公式X)

 フライング タイガーやオーサムストアの目覚ましい成果を見て、生活雑貨が売れると踏んだカインズやニトリは、いずれも自社企画・自社製造に注力を開始。それぞれデザイン性の高い商品を安価で売るSPA企業であったので、臨機応変に低価格雑貨に挑んできた。カインズやニトリの戦略は当たり、雑貨に無関心な大塚家具の退潮を余儀なくさせ、ヤマダデンキを中心とするヤマダホールディングスが大塚家具を買収する伏線となっていく。

カインズの生活雑貨業態であるスタイルファクトリー

 また、カインズが東急ハンズを買収して「ハンズ」へと改名したのは記憶に新しい。そればかりでなく、ホームセンターで販売力がトップクラスのカインズ、家具で販売力がトップクラスのニトリは、圧倒的な集客力でオーサムストアの勢いをじわじわと削いでいた。

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