「1食360円」「映画をイメージした内装」 USJが従業員食堂を「内製化」したワケ(3/3 ページ)

» 2024年02月28日 05時00分 公開
[鬼頭勇大ITmedia]
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退職した総料理長を招へい

 リニューアルに当たって特に工夫した点について、鎌田氏は「ただの食堂にはしたくなかった」と振り返る。そこで、開業当初から長らくパークの総料理長を務めてきた石束(いしづか)拓夫氏を招へいした。

 「石束さんは、従業員食堂の食事体験をもっと良くできると考えて、これまでも内製化を訴えていました。何より毎日の食事に関する満足度を高めることが、クルーの満足度やパフォーマンスのクオリティーを高めると考えていたそうです。

 ただ、その道半ばで退職され、実家の喫茶店に戻って仕事をされていました。クルーカフェを内製化できるとなったとき、社内では『石束さんの力を借りない手はない』となり、ご家族の理解もあり、アドバイザーに就任してもらうことができました」(鎌田氏)

従業員食堂の様子(撮影:筆者)

 石束氏という力強いメンバーも迎え、念願の内製化を果たしたクルーカフェ。鎌田氏が語ったように「普通の食堂」にとどまらず、旬の食材を使った季節メニューなどにも取り組む。先述の通りに安価な価格も、値上げラッシュの中で維持し続けている。

 これまでと違い、クルーカフェで働くメンバーも社外のスタッフから、同じ社内のクルーとなったことで、お昼時の利用者に対して「午後も頑張ってくださいね」といった形でコミュニケーションが生まれるなど、ホスピタリティの向上効果が見られている。クルーカフェから少々離れたオフィスで働くクルーも、わざわざクルーカフェへ足を運んで食事する機会も増えており、期待していた効果はすでに表れているようだ。

 実際に筆者がクルーカフェを訪問したところ、昼のピークタイムを過ぎた午後2〜4時ごろでもさまざまなクルーでにぎわい、おのおのが食事など憩いの時間を楽しんでいた。ちなみにこの日はヘルシーメニューが売り切れ。サラダバーも盛況を見せており、健康志向のクルーも納得の食堂となっているようだ。

 冒頭で紹介した調査結果(Theme Index Museum Index 2022)によると、USJの2022年における来場者数は1235万人。これは米フロリダ州のマジックキングダム・パーク(1713万人)、同じくカリフォルニア州のディズニーランド・パーク(1688万人)に次ぐ世界3位の数だ。

 USJは01年にオープン。初年度に1102万人の来場者数を記録したものの、2年目は700万人台へと大幅に低下。その後も800万人台で推移していた。13年度には01年度以来12年ぶりとなる1000万人超を記録すると「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」エリアのオープンを迎えた14年度は1200万人を超え、初年度の数字を塗り替えた。

 さまざまなコンテンツの世界観を再現したフードで来場者をもてなすだけでなく、社内クルーの食体験にも注力するUSJ。クルーの働きがいある環境づくりが、活気のあるパーク運営を支えている。

バリューメニュー(画像提供:ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)
ヘルシーメニュー(画像提供:ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)
USJメニュー(画像提供:ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)

著者プロフィール:鬼頭勇大

フリーライター・編集者。熱狂的カープファン。ビジネス系書籍編集、健保組合事務職、ビジネス系ウェブメディア副編集長を経て独立。飲食系から働き方、エンタープライズITまでビジネス全般にわたる幅広い領域の取材経験がある。

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