明治「アポロ」は子どもだけのお菓子? 「大人になったら食べなくなる」をどう脱却したのか(2/3 ページ)

» 2024年03月03日 08時00分 公開
[菊地央里子ITmedia]

急ピッチで進められた、明治の“アポロ計画”

 形が宇宙船アポロ11号からイメージして作られたと聞くと「アポロという名前も宇宙船から付けられたのでは」と思う人も多いだろう。だが、寺園さんによればそうではないという。「実はお菓子の名前として同社が『アポロ』を商標登録したのは、66年のことでした。宇宙船アポロ11号からではなく、ギリシャ神話に出てくる太陽神のアポロンが由来です」(寺園さん)。しかし、その当時は商標登録したのみで、具体的な商品の構想はなかったという。

apolo 発売当時のアポロ(同社提供)

 その後、NASAが月面着陸計画を発表。その宇宙船の名前が偶然にもアポロだったことから、68年の春に商品開発をスタートした。当時の社内では、NASAの月面着陸計画にあやかり、明治のアポロ計画と呼ばれていた。月面着陸に間に合わせるため、開発自体は急ピッチで行われたという。

アポロから生まれた、人気商品とは?

 実は、アポロはある人気商品の誕生に大きく関わっている。「アポロの発売から数年後は、まだまだ売れ行きが苦戦している時期でした。製造工場の生産ラインも、フル稼働できない状況が続いていたのです」(寺園さん)。休止しているアポロの製造ラインをなんとか活用できないか、新しいチョコレート菓子の試作が行われていた。

 試行錯誤を繰り返す中、大阪工場の担当者がある試作品を持ってきた。その試作品とは、アポロの金型にカシューナッツをさしたもの。見た目は、きのこにそっくりだった。当時のチョコレート菓子は板チョコやチョコバーが主流だったため、きのこそっくりな見た目の試作品に対して、社内では賛否両論が出たという。

apolo アポロから生まれた「きのこの山」(同社公式Webサイトより引用)

 また、農作物であるカシューナッツは、形が均一ではないなどの理由から量産に向いていなかった。そこできのこの軸の部分をクラッカーで再現することに。さまざまな素材との組み合わせを試し、チョコレートとクラッカーの品質や形、製法を確立するため何百もの試作が行われ、約5年かけて1975年に誕生したのが「きのこの山」だった。

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