「悪い円安論」が聞こえなくなった理由 メディアは「良い円安論」を説き始める(1/2 ページ)

» 2024年03月07日 07時15分 公開
[ZAKZAK]
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 先日、子供が風邪をひいたので病院に連れて行ったあと、処方箋を持って薬局に行った。すると、薬をもらうときに薬剤師から「この薬は副作用としてお腹がゆるくなることがあります」という説明を受けた。

花粉症の薬をもらったときも、副作用で眠くなるかもしれないと説明を受けた。副作用があるにもかかわらず、その薬を服用するのは、熱を下げたり、かゆみを抑えるという効用を求めるからだ。

 ネットの世界ではゼロかイチかの極端な意見が好まれるが、実際の世の中はメリットとデメリットの両方を天秤に乗せながら、グレーゾーンのどこかで最適解を見つけて意思決定を行うものである。

 さて、為替市場を見てみると、2022、23年に続き、今年も1ドル=150円を突破した。過去2年は円安を「悪い円安」として批判する記事ばかりだった。22、23年は新型コロナウイルスが落ち着いたことで消費が拡大したことや、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、世界的に原材料やエネルギーの価格が高騰した。多くの資源を輸入に頼る日本は円安によってその価格がさらに押し上げられたことで、国内の物価に上昇圧力がかかり、家計の負担が高まったことが否定的な見方の背景にあったと考える。

 筆者は「マクロ経済全体では円安の方が追い風になる」と主張してきたが、世論としては物価高による負担増への不満が高まっていることから、「悪い円安論」が好まれていた印象があった。

 しかし、24年になると散々「悪い円安論」を説いていたメディアは「良い円安論」を説き始める。なぜなら、日経平均株価がバブル後の最高値を更新し、4万円の大台すら視界に入ってきたからだ。今回の株高の背景には日本のデフレ脱却期待や、同じアジア圏でも中国の経済が悪化しており、そこから逃避した資金の日本市場への流入など複数の要因があると考えているが、日本企業の業績拡大期待もあるだろう。

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