半導体に沸く熊本、高賃金の黒船襲来 給料を上げるには?産業創出という打ち出の小槌 (3/5 ページ)

» 2024年03月09日 18時34分 公開
[産経新聞]
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岩盤規制に風穴

 TSMCの誘致で地域活性化のきっかけをつかんだ熊本の成功は、日本が直面する安全保障の課題に向き合い、変化を恐れない姿勢が経済を成長させ賃金上昇をもたらす証左だ。同じように人手不足の課題解決を新たな成長に結びつけるため、岩盤規制に風穴を開けて産業構造に変化を起こそうとしているのが、一般ドライバーが有償で客を輸送する「ライドシェア」だ。政府は昨年12月の規制改革で、今年4月からの一部解禁を決定した。

 埼玉県内に住む20代の会社員男性はライドシェアに興味を持ち、都内のタクシー会社へ問い合わせた。勤務先企業は副業が可能で、空いた時間に副収入を得たいと考えている。「もともと運転は好きだし、勤めている会社の業績が悪くなって給料が上がらない。稼げそうなら本業にしてもいいかもしれない」と前向きだ。

 交通の足の確保が難しい地域では、自治体が運行主体となる「自治体版ライドシェア」を導入。全国に先駆けて2月から実証実験を開始した石川県加賀市がドライバーを募集したところ、50人を超える応募があった。

 加賀市のライドシェア事業を支援するウーバージャパン(東京)の担当者は「移動手段の増加による波及的な経済効果は大きい」と指摘。タクシー業界の運転手不足が顕在化した夜間や郊外の需要を取り込む社会的メリットが大きいからだ。有名観光地から外れた地域の店舗や観光地にも消費の足が延び、終電や飲酒運転の心配が不要になることで消費が拡大することが期待されるという。

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