JR豊肥線の原水駅(熊本県菊陽町)は、ひなびた無人駅だ。ここから2キロほど離れた丘陵地に半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の第1工場ができた。周囲には田んぼとキャベツやニンジンの畑が広がっている。
「この前乗せた高専の先生は、『生徒1人に十数件の求人が来ている』と喜んでいた。われわれの業界でも月に100万円以上も稼ぐ仲間がおり、半導体さまさまだ」
タクシーの運転手は好況に沸く地元の様子に目を細める。菊陽町ではTSMCに隣接するソニーセミコンダクタソリューションズグループや、東京エレクトロンの工場も設備投資を進める。
半導体は経済の必需品だが、人工知能(AI)などに必要な先端品の製造はTSMCや韓国サムスン電子に集中し、台湾危機など東アジアの有事で供給途絶のリスクがある。安定供給は経済安全保障の最優先課題だ。政府は1兆2千億円という巨額の補助金を出す代わりに原材料の現地調達比率を高めるようTSMCに求めており、需要を期待した関連工場の立地や増設が相次ぐ。
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