音響メーカーのオーディオテクニカは、なぜ「寿司ロボット」を開発したのか しかも40年前から祖業は「レコード針」(1/4 ページ)

» 2024年03月16日 09時15分 公開
[鬼頭勇大ITmedia]

 「和食ブーム」が続いている。農林水産省の輸出・国際局 輸出企画課が発表している「海外における日本食レストランの概数」によると、2006年は約2.4万店だったが、13年には約5.5万店へ増加。その後も成長ペースを維持し、23年の店舗数は約18.7万店にのぼった。アジアの約12.2万店を筆頭に、北米(約2.8万店)、欧州(約1.6万店)など、今や和食レストランは世界各国に広がる。

海外でも回転寿司が増えている(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 和食の代表格といえば、寿司だろう。こちらも好調で、例えば回転寿司のくら寿司は、23年10月期決算において北米セグメントの売り上げが前年比で51.3%増となる約259.7億円、アジアセグメントは同35.3%となる約215.6億円を記録した。FOOD & LIFE COMPANIESが運営するスシローも、23年9月期の海外売り上げが前期比72.7%増となる約661.3億円となった。

くら寿司は海外店舗に注力(画像は中国上海市の「くら寿司 上海龍之夢中山公園店」)
スシローはインドネシアにも進出(画像は「スシローポンドックインダモール店」)

 今や国内では当たり前に見かけ、和食ブームを背景に海外展開も旺盛に続ける回転寿司。ここまで普及した背景には、シャリ玉を高速で製造したり、海苔を巻いたりする「寿司ロボット」の存在がある。そして、意外にも感じるが寿司ロボットを提供している企業の一つに、ヘッドホンなど音響機器を販売しているオーディオテクニカがある。

祖業はレコード針の製造販売、現在の主力はヘッドホン

 オーディオテクニカは1962年、東京都新宿区で創業した。同社によると22年度の売り上げは国内で約292億円、稼ぎ頭は全体の4割ほどを占める、イヤホンを含むヘッドホン群だ。次いでおよそ3割をマイク関係が占め、ターンテーブルや周辺アクセサリが1割強。寿司ロボットを含む食品加工機器が、1割弱という売り上げ構成になっている。

音響機器を販売しているオーディオテクニカが寿司ロボットを扱っている

 同社の祖業はレコードプレーヤーのフォノカートリッジ、いわゆる「レコード針」の製造販売だった。カートリッジが売れ行きを伸ばすとともに業容を拡大し、現在の主力商品の一つである、ステレオヘッドホンの研究開発を1974年に開始した。

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