音響メーカーのオーディオテクニカは、なぜ「寿司ロボット」を開発したのか しかも40年前から祖業は「レコード針」(3/4 ページ)

» 2024年03月16日 09時15分 公開
[鬼頭勇大ITmedia]

「握り」のスピードは約5倍に

 当初は家庭向けとして開発したにぎりっこだったが、商品の性質上、厨房機器としてのニーズにも目を向けた。全社として新規開拓に注力する中で、オーディオ担当の営業も拡販に努め、東京・かっぱ橋の厨房用品店や、通販・カタログギフトなどにも売り込みをかけていった。さまざまなチャネルに営業する中で「より業務用に特化した仕様にすれば売れるのでは」という声が多かったことから、業務用寿司ロボットの開発に乗り出していった。

 まず、側面にモーターを付けることで成形作業を効率化。すると、競合製品が少なかったこともあり、好評を博した。比較的小さなサイズ感で狭い厨房でも導入しやすかったことから、90年代に入って続々と購入する企業が増えていった。シャリ玉の製造が効率化したことにより、その後回転寿司が浸透していったのは冒頭で紹介した通りである。

業界初「両取りモード」を採用した業務用すしロボット“すしメーカー”ASM430(2017年に発売)
手動“のりまきメーカー”ASA190(2018年に発売)

 にぎりっこの発売から40周年を迎えた今、同社の寿司ロボットのラインアップは10種類にまで拡大した。シャリ玉を製造するものや海苔巻きを製造するもの。さらに、寿司酢を合わせる機械や海苔巻きをカットする機械なども展開している。

 にぎりっこはシャリ玉を成形することを念頭に置いていたが、現在はスピードとクオリティーともに改良している。例えば、シャリ玉を製造する3種のうち普及帯モデルである「ASM430」では、1時間当たり4200個のシャリ玉を製造できる。業務用として販売した初代ロボットのスピードが1時間当たり900個だったことを考えると、5倍弱にまで進化している。シャリのクオリティーもCTスキャンや粘着度の測定などを通して、食感の良さとともに同じサイズのシャリを安定して製造できるように改良を重ねた。

 海苔巻きを製造する機械は、シャリを平らにならした「シャリ板」を作り、セットした海苔の上に乗せるもの、さらに巻き込み作業までワンストップで行える機械を展開している。海外では日本とは逆にシャリを外側にする海苔巻きも多く、シンプルな前者のほうが人気だという。寿司ロボットの売り上げを見ると、国内4に対して、国外は6。和食ブームの一翼を担っているようだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.