「イトーヨーカドー」はなぜ大量閉店に追い込まれたのか “撤退できぬ病”の可能性スピン経済の歩き方(3/6 ページ)

» 2024年03月20日 08時15分 公開
[窪田順生ITmedia]

かなり前から指摘されていた問題

 厳しい言い方だが、イトーヨーカドーはこういう「撤退すべきか否か」を社内で議論すべきタイミングはとっくの昔に過ぎている。

 先ほど紹介した「2階以上がもうからない」「立地戦略のミス」問題は、実はかなり昔から流通ジャーナリストや専門家から指摘されていた。

 ご存じのように、2000年代に入ってユニクロ、しまむら、ニトリなど「非食品」の専門チェーンが成長して全国展開していくと、百貨店や総合スーパーは衰退の一途をたどっていく。イトーヨーカドーの売上高も右肩下がりとなり、最終利益は05年以降ガクンと落ち込んでいた。同店の行く末を案じる人々は「今、何か手を打たないと本当にヤバいことになりますよ」とかなり危機感をもって苦言を呈していた。

売上高が下がる中、経営判断は……(画像はイメージ、提供:写真AC)

 しかし、イトーヨーカドーが「もうけられない」という構造的な問題に陥っていた衣料品事業からの「撤退」を決断したのは23年春。しかも、『読売新聞』の記事にあるように、最後まで揺れていたのである。

 「とにかく決断のスピードを求められる外資と違って日本企業は慎重に議論を尽くす」という国民性を考慮しても、この異常なまでの「寝かせっぷり」は、残念ながら重度の「撤退できない病」だったと言わざるを得ない。

普段、よく利用している総合スーパー。イトーヨーカドーの利用が減っている(調査は11月1〜5日、9718人が回答、出典:マイボイスコム)
総合スーパーを利用する際、重視していること(出典:マイボイスコム)

 さて、そこで次に気になるのは、なぜイトーヨーカドーは「撤退」できなかったのかということだろう。「そりゃあ雇用を守るためだろ」という人もいるだろうが、それはかなり疑わしい。

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