厳しい言い方だが、イトーヨーカドーはこういう「撤退すべきか否か」を社内で議論すべきタイミングはとっくの昔に過ぎている。
先ほど紹介した「2階以上がもうからない」「立地戦略のミス」問題は、実はかなり昔から流通ジャーナリストや専門家から指摘されていた。
ご存じのように、2000年代に入ってユニクロ、しまむら、ニトリなど「非食品」の専門チェーンが成長して全国展開していくと、百貨店や総合スーパーは衰退の一途をたどっていく。イトーヨーカドーの売上高も右肩下がりとなり、最終利益は05年以降ガクンと落ち込んでいた。同店の行く末を案じる人々は「今、何か手を打たないと本当にヤバいことになりますよ」とかなり危機感をもって苦言を呈していた。
しかし、イトーヨーカドーが「もうけられない」という構造的な問題に陥っていた衣料品事業からの「撤退」を決断したのは23年春。しかも、『読売新聞』の記事にあるように、最後まで揺れていたのである。
「とにかく決断のスピードを求められる外資と違って日本企業は慎重に議論を尽くす」という国民性を考慮しても、この異常なまでの「寝かせっぷり」は、残念ながら重度の「撤退できない病」だったと言わざるを得ない。
さて、そこで次に気になるのは、なぜイトーヨーカドーは「撤退」できなかったのかということだろう。「そりゃあ雇用を守るためだろ」という人もいるだろうが、それはかなり疑わしい。
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