8万円を超える「カセットコンロ」が完売 イワタニはなぜ“極”めたのか「次の駅まで」に読めるハナシ(1/2 ページ)

» 2024年03月10日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

 ホームセンターに足を運ぶと、カセットコンロがズラリと並んでいる。価格を見ると、高いモノは1万円ほどするが、ボリュームゾーンは2000〜3000円といったところ。高価格帯の商品は「強風のときでも使える」「火力が強い」などと書かれているが、家で鍋料理をするときに使うのであれば、「2000〜3000円のモノで十分でしょ」と思っている人が多そうだ。

 「カセットコンロ=数千円」といった相場観がある中で、岩谷産業(大阪市)は最上位モデルを投入した。商品名は「イワタニカセットフー “極”(きわみ)」で、価格は8万2500円。専用の桐箱は2万7500円なので、セット価格は11万円である。

イワタニカセットフー“極”(きわみ)
専用桐箱も販売している

 「な、なぬ? 10万円を超えるだと? 信じられない」「庶民のサラリーマンには関係ないね。高いコンロでも、安いコンロでも同じ火でしょ。だったら、安いのでいいや」などと思われたかもしれない。しかし、である。1月31日、同社のECサイトと直営店で販売したところ、2月中旬には完売。その後も「ワタシもほしい」「オレもオレも」といった人がいたようで、「完売」の二文字がずっと表示されているのだ。

 極の特徴は、2つある。1つは、円形のプレートであること。カセットコンロのデザインといえば、四角が定番である。しかし、この商品は五徳(ごとく)と脚が一体になったデザインを採用。盃形をしているので、テーブルから浮いているようなシルエットになっているのだ。

 もう1つは、塗装である。通常のカセットコンロは金型をベースにつくられていて、工場で大量生産している。一方の極はアルミを流し込んで、型を抜くという製法を採用した。しかも、工程の多くは手作業である。また、本体は黒を基調としていて、表面は小さな凹凸があるレザートーンと呼ばれる塗装を施した。

 極を発売するまで、同社で最も高いカセットコンロはいくらするのか。商品名はカセットフー アモルフォプレミアムで、価格は3万3000円。「そ、そこそこするじゃねえか。8万円以上もする商品なんていらないんじゃね」などと感じられたかもしれないが、実はこのシリーズは1990年代に発売されているので、30年以上も続くロングセラー商品なのだ(前身のモノを含む)。

カセットフー アモルフォプレミアム(3万3000円)

 30年以上も販売を続けていると、好調のときもあれば、不調のときもあるのかと思いきや、そうでもないようで。「対前年比100%前後で推移することが多いですね」(総合エネルギー事業本部の遠藤勇太さん)とのこと。新しいお客がどんどん増えているのではなく、高級料亭などで使っていて、「そろそろ替えどきかな。次も3万円のコンロでいいよね」といったリピーターが多いそうだ。

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