独立直後に損害賠償、酔った客が店内破壊…… 小さな「立ち飲み」業態で上場した社長が語る“平たんではない”道のり(2/5 ページ)

» 2024年03月25日 05時00分 公開
[三ツ井創太郎ITmedia]

飲食業界に入ったきっかけ

 「私は高校を卒業して、とりあえず何か仕事をしなければならないと思い、フィットネスジムのインストラクターを始めました。そこのジムに通っておられたスリランカ人のお客さまから『今度インド料理店をやるから日本人店長として働いてほしい』と誘われ、飲食業界で働くこととなりました」

 スリランカ人のオーナーからのヘッドハンティングという変わった経緯で飲食業界で働くこととなった大谷社長。飲食業界は全くの未経験でしたが、何とか手探りでインド料理店をオープンさせます。オープン後も試行錯誤をしながらお店を切り盛りしますが、思ったようにお客さまが増えず売り上げが厳しい状況が続きます。

 「インストラクター時代もそうでしたが、自分は負けず嫌いで物事が上手くいかない時こそ、諦めずに新しいチャレンジをすることを心がけていました。

 初めて店長を任されたインド料理店ではオープン時から集客に苦戦していたので、何かできないかと考えた末に“インド料理のランチバイキング”にチャレンジしました。お店はロードサイドにあったのですが、当時のインド料理店といえば、私が働いていたお店も含めて、カレーとナンのセットメニューを提供するところがほとんどでした。

 ただお客さまが来ない中、そのメニューだけで来店動機を獲得することは難しいと思いました。そこで、インドカレーの他にタンドリーチキンやサラダ、数種類のナンなど、さまざまな料理をセルフサービスのバイキングスタイルのメニューにリニューアルをしました。

 すると驚いたことに、このランチバイキングを始めるとお客さまがどんどん増え、いつしかお店は多くの人でにぎわう繁盛店となっていました。実際に来店されたお客さまと話をすると“日頃は野菜不足なのでこのお店に来るとたくさんの野菜が食べられて健康になった気がするよ!”とか、“ビュッフェスタイルなので、短いお昼休憩時間でも待たずにランチが食べられるので助かるよ!”といったお声をたくさんいただきました。

 私はこうした声を聞いた時に、お客さまは単にインド料理を食べたいのではなく、“健康”や“時間の有効活用”といったニーズで、自分のお店を選んでくださっていることに気付きました」

 大谷社長はこのチャレンジで、飲食店で成功するためには「業態」「料理」といった表面的な要素だけではなく、お客さまの“本質的な来店動機”に着目することが大切だと痛感したそうです。大谷社長が考案した「インド料理のランチバイキング」は、飲食業界内でも大きな話題となり、有名な飲食業界専門誌から特集取材を受けました。そしてこの特集記事が、大谷社長の人生を変えるきっかけとなります。

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