なぜ長野県のガソリン価格は日本一高いのか 過去には安い店もあったのに(3/4 ページ)

» 2024年03月31日 07時28分 公開
[産経新聞]
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安売り店には追従せず

 どうやって小売価格を決めているのか、長野県内でSSを複数経営している石油製品販売会社の役員に率直に尋ねた。すると「そのSSで販売できる見込み量とコストを計算した上で、周囲のSSの価格を見比べながら決めている」とのこと。

 しかし、安売り店が出てきたら値下げ競争になるのかというと、そうでもない。「過去に安売り店が出店したとき、競争できない価格だったので追従しなかった。そのうち、安売り店の方がつぶれてしまった」という。ただ「ガソリンを赤字覚悟の価格で客集めに使い、併設する食品販売で利益を生み出す大型スーパーが県内に出店したら…」と戦々恐々としていた。

 都道府県別販売実績(石油連盟、令和5年速報値)と、都道府県別給油所数(エネ庁、4年度末登録ベース)から、SS1店舗当たりの年間ガソリン販売量を算出すると、全国平均が3544.9キロリットルなのに対し、長野は1162.5キロリットルで30位。21位だった群馬は1480.6キロリットルで、長野より27%多かった。その分、群馬の方が価格競争を仕掛ける体力があるといえる。

 販売量が少なくても、SS設備の維持管理コストが減るわけではない。貯蔵タンクは埋設年数に応じ、内面ライニング工事や電気防食工事、精密油面計設置など老朽化対策工事も必要になり、これに1500万円前後の費用がかかる。「国の補助金があっても持ち出しはある。工事が必要になるタイミングで廃業したSSは多い」と、この役員は明かす。

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