経済を支えているのは誰か? 大企業だけではない現実(1/2 ページ)

» 2024年04月05日 08時31分 公開
[ZAKZAK]
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 世は株高だし、春闘も連合集計では5%超の賃上げだ。仲間同士の花見会も盛り上がりそうだが、中には今後のフトコロ具合や事業のことを考えるとそう浮かれていられない向きもいるかもしれない。

 参考になるのは、日本企業の戦略に関する伊丹敬之一橋大学名誉教授の4月1日付日本経済新聞経済教室論文である。伊丹さんは大企業について、「『好業績』にはまやかしの部分があるように思われる。未来のための成長投資を避け、また人件費を削って上げた好業績の部分がある」とズバリ指摘した。大企業による配当の設備投資や人件費に対する比率がともに、2002年度以降急上昇してきたという。それに比べ、中堅・中小企業のほうはなだらかにしか上昇していないというデータを示した。

 大企業は米国型の株主最優先の経営へと舵を切った結果、未来の可能性を危うくすると同時に、現下の働き手の生活も犠牲にしてきたのだ。産業界の頂点に立つ大企業がこんな有り様では、岸田文雄首相のフレーズ、「成長と分配の好循環」なぞ空しく響く。

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 そこでグラフを見ていただこう。財務省の法人企業統計にある企業の配当金、従業員への報酬(給与、賞与、福利厚生費の合計=人件費)について、アベノミクスが始まった2012年度に比べ、22年度にどれだけ増えたかを大企業(資本金10億円以上)と中小・零細企業(資本金1億円未満)別に算出してみた。なるほど、伊丹さんの指摘通り、大企業の配当増は目覚ましい。それに比べ、従業員報酬、設備投資は貧弱である。対照的には中小・零細企業の収益配分は従業員報酬や設備投資に重点を置いているではないか。しかもいずれの増加額とも大企業を上回っている。国内総生産(GDP)で表わされる私たちの暮らす実体経済は、消費の原資になる給与所得や設備投資に支えられて成長するのだが、貢献度は大企業よりも中小・零細企業なのである。

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