これらの前提を踏まえ、若手社員との良好な関係性を構築・維持するために有効な心構えとして、まず次の3点を意識して実践するとよいだろう。
転職を前提としたキャリア形成志向、副業や兼業への興味、プライベート重視姿勢などを尊重すること。
部下のキャリアプランやライフプランを把握した上で配慮し、彼らの成長や小さな変化に気付き、「日々の働きぶりを見ている」と知らしめること。
仕事の意味や意義を伝えるとともに、部下の意欲を刺激して行動を促し、試行錯誤に伴走するなど、フォローを意識的に実施すること。
以下、実際に上司が部下にどのような声掛けをしたらいいかなどの実例も踏まえながら、順番に説明していこう。
「社会人なら少々の理不尽に耐えるのは当然。苦労した分だけ成長できるんだ!」「自分が若いときは、残業や週末出勤など当たり前だった!」――上司が抱いているこのような前提が、部下とのコミュニケーションを妨げ、仕事の生産性を下げる要因となり、場合によっては「パワハラそのもの」と思われているかもしれない。
大前提として「あなたと部下は大きく違う、まったくの別人」であるとの認識から始めなくてはならない。部下である相手は、社会人経験がまだ浅い。一方であなたはさまざまな修羅場を潜り抜け、管理職まで出世を果たした、社会人としてはむしろ「特殊なタイプ」だ。
自分は厳しい指導を受けたり、放置されたりしたところで「伸びる」タイプだとしても、部下が同じレベルのストレスやプレッシャーに耐えられるとは限らない。あなたとっては「会社や仕事が一番」であっても、部下はあなたと同じように仕事はこなせないし、プライベートの充実こそが仕事へのエネルギーとなるタイプかもしれない。
「相手の成長のため、良かれと思って」したハイレベルな要求や叱咤激励が、パワハラ認定されたケースもある。パワハラ的な指導に慣れ(むしろパワハラにあたる指導を受けてきた経験しかなく)「自分は打たれ強い」との自覚を持った人であればあるほど、打たれ弱い部下の気持ちを理解できず、「社会人ならこれくらいのプレッシャーは当然」といった信念を持ってしまいがちだ。
「寛容な上司」を持った経験がない方に「上司としての寛容さ」を求めるのは酷かもしれないが、そもそもあなたと部下は別人であり、タイプも大きく異なるのだ。部下に迎合する必要は決してないが、大前提を共有していない人を相手にしていることを念頭に置き、「彼が仕事上で最も重視している価値観は何だろう」「彼女はこの仕事を通して、どんなライププランを実現したいと考えているのだろう」といった形で個々の部下の価値観を把握し、それらの価値観に対して寛容であるべきなのだ。
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