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若手を怖がるのではなく、理解せよ――パワハラにならない「やる気の出させ方」働き方の「今」を知る(3/4 ページ)

» 2024年04月10日 07時00分 公開
[新田龍ITmedia]

(2)個々の部下に関心を寄せ、こまめに承認すること

 昨今、従業員の「エンゲージメント」つまり仕事や組織への主体的な貢献意欲をいかに高めるか、というテーマが注目を集めている。

 これは単なる「従業員満足」や「忠誠心」とは異なり、会社組織と従業員が相互に尊重し合い、愛着を持てているがゆえの自発的な行動を基とした「確固たる信頼関係」であり、従業員目線なら「この会社の社員であることが誇り! 周囲の人にもこの会社の良さを自慢したい!」と言える状態のことだ。

 各社ともエンゲージメントをいかに高めるか、知恵と工夫を凝らしている。その中でも実際に従業員エンゲージメントが高い組織は共通して「日常的なコミュニケーションの中で、従業員間の承認や動機づけが自然になされる組織風土」を維持すべく、地道な努力を継続している。

画像提供:ゲッティイメージズ

 「言うだけなら簡単! それが難しいから皆困ってるんだ!」と思われるかもしれないが、やるべきこと自体はシンプルなのだ。

 具体的には、管理職であるあなた自身が、

  • 個々の部下に対して積極的に強い関心を持ち、
  • 彼らのキャリプランやライフプランまで把握したうえで、
  • 日々の行動・言動を注意深く観察し、
  • 相手の個性や状況を踏まえた声がけをすること

 である。そうすることで、相手にとって受け容れやすく、また相手が意見を表明しやすい関係性を構築・維持できることになるはずだ。

 身近な例でいえば「なんとなく反応がにぶいから、この話は早々に切り上げて次の話題に移ろう」「スポーツ観戦好きだという相手に合わせて、サッカーに例えて話してみよう」「相手はハードワーク肯定派だから、単に『残業するな』じゃ通じないだろうな」などと、相手の状況や志向、価値観を意識しながらコミュニケーションを取るほうが、より意図が伝わりやすいことは自明であろう。そんな配慮のレベルをもう一段階上げるのだ。

 例えば、早くチームリーダーに昇進したいと考えている部下に対しては「自分のタスクが終わって余裕があったら、上司や他のメンバーで支援が必要そうな人のサポートに回ってみたらどうだろうか。チームリーダーは『自分がやりたい!』という人より、『あの人にリーダーになってもらいたい!』という人が任せられるものだぞ」と助言できるだろう。

 家庭重視の部下であれば「来週水曜に娘さんの授業参観があるんだろ? だったら今週中に仕事をここまで終わらせておいて、水曜は半休をとってもいいぞ」といった声がけをするのがいいかもしれない。このように、相手に合わせたコミュニケーションを日常的に心がけるとよいだろう。

 そうすれば部下は「ここまで自分のことを考えてくれているのか」と、あなたに対する信頼感は確実なものとなるはずだ。

 そして「承認」もまた、組織マネジメントにおいて頻出するキーワードでありながら、なかなかハードルが高いと感じる人は多いはずだ。そもそも、部下を承認すべき管理職自身が、これまで承認を受けてマネジメントされた経験に乏しく、何をどうすればいいのか分からない上に、「承認」=「部下を甘やかすこと」「ご機嫌をとること」などと勘違いしている人も一定割合存在しているためであろう。

 しかし「承認」は、甘やかしでもご機嫌とりでもない。いわば「相手を望ましい方向へ変化させるための有効な手段」である。

 例えば、あなたが新規取引先との大事なプレゼンテーションに備え、久々にパリッとしたネクタイとスーツでオフィスに出社したところ、目をかけている部下から「おっ、上品なスーツですね! いつも以上に威厳が感じられて素敵です!」などと言われたらどう感じるだろう。おそらくつい気分が良くなって、今後も気合いが必要な場では意識的に同じようなスーツとネクタイの組み合わせを選んでしまうのではないだろうか。

 これはまさに「承認」による、あなた自身の「行動の変化」である。この構図と同様に、組織にとって望ましい行動に対してあなたが適切な承認を与えることで、無理矢理指示をする必要もなく、メンバーの行動を促すことができるのだ。

 仕事の問題を常に可視化し、問題が発生してもすぐに解決できる環境を実現することを、仕事の「見える化」と言う。同様に、お互い本音を言い合える関係を作り、問題点や解決策を共有・対処できるようにすることは仕事の「言える化」と呼べるだろう。あなたが率先して組織風土を「言える化」することで、昨今同様に重要視される「心理的安全性」の確保にもつながることになるのだ。

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