AIを車載「DSオートモビルがChatGPTを全モデルに搭載」って一体どういうこと?池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/5 ページ)

» 2024年04月08日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

国を代表する国産車DS

 こうした国を代表する高級車の欠落を補完するために、DSが法人化されたのは14年。極めて新参のブランドなのだが、国の威信を背負う責務があるという意味で、極めて難しい立ち位置である。

 PSA時代のDSは高級車を作りたくとも、手持ちの最大サイズのプラットフォームがCセグメント。トヨタでいえばカローラをベースにレクサスLSを作らなければならないという無理難題である。シャシーもエンジンも高級車として十全とはいえない中で、彼らが見出したのは、極めてクセの強いデザインと、アバンギャルドな装備である。

 さて、話は一度シトロエンの歴史的モデルに遡る。シトロエンは高級車でこそなかったが、極めて個性的な技術を採用する先進性の高いブランドであった。そもそもDSオートモビルの由来となった1955年デビューのシトロエンDSは、自動車史の異端児とさえ言えるクルマで、かつてのシトロエンの代名詞であった空気バネと油圧を用いた「ハイドロニューマチック・システム」によるサスペンションを筆頭に、車体のピッチングやステアリング操作に連動して光軸を保つヘッドランプなど、革新的な新機軸をこれでもかと盛り込んだアバンギャルドなクルマであった。

 特にFFレイアウトとロングホイールベースで直進性を担保し、フロントのトレッドをワイドにリヤをナローに設定してフロントの限界を上げつつ、リヤの限界を下げて旋回時の回頭性を確保する特異なジオメトリーと、そこに前述のハイドロ・ニューマチックを組み合わせた前代未聞のサスペンションは、直進安定性と回頭性を両立しつつ乗り心地も追求するという、自動車の性能として根本的に相反する課題への全く新しい回答であり、こういう革新性が「シトロエン=前衛的」というイメージを生み出した。

 DSは、シトロエンのこの前衛的イメージを核に、トヨタに対するレクサスのようなシトロエンの上位ブランドを構築している。間もなく新世代のシャシー群が登場して、少し話が変わってくるかもしれないが、問題は今の手持ちシャシーにはそういう前衛的な仕掛けを薬にしたくともないことだ。となればデザインでそこを突破する以外に方法がない。

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