2000年代からは、女性の社会進出が本格化していく。職場の女性比率も急激に上昇していった。オフィスチェアもこうした環境変化に合わせ、性差に対応したつくりを意識するようになった。イトーキでは女性の開発者を集め、女性ユーザーのデータを取るようになる。女性ならではの「足がむくみやすい」といった問題に配慮した設計や、レバー操作時にネイルが干渉しないようにしたオフィスチェアを展開していった。
10〜20年代に入ると、企業に対して「健康経営」「SDGs」「働き方改革」が求められるようになる。職場環境に起きた大きな変化の一つとして、イトーキが注目したテーマは「コミュニケーション×執務」だ。会社員が机上で向かうのは、デスクトップPCからノートPCに変わり、タブレットを片手に隣の席の人と話すシーンが生まれた。座席のフリーアドレス化もこの頃から流行しはじめていた。こうした潮流を受け、イトーキは執務姿勢をサポートするだけではなく、コミュニケーションのしやすさも意識したを椅子を設計するようになっていった。
こうして現在に至るわけだが、今後の椅子はどのような姿に変わっていくのか。イトーキで商品開発を担当する髙橋健介氏(スマートオフィス商品開発本部)はこう話す。
「VRゴーグルを着用した仕事が日常的になるかもしれない。もしキーボードが無くなり、声だけで仕事するようになったら椅子はどう変わっていくのか――という話は社内でも話題に上がっている。
ただ、今後はツールに縛られない働き方になると思う。特定の机と椅子に縛られないシーンはもっと増えていくのではないか。
働き方も働く場所も多様化しており、長時間座り続けて作業する仕事もあれば、そうでない仕事もある。エルゴノミクス(人間工学)の設計とともに、その空間にあう意匠性も求められる。さまざまなタイプの椅子をつくっていく必要があると感じている」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング