「離れて見てね」を教えてくれる キングジムの「めまもりん」が面白い分かりにくいことを分かりやすく(2/5 ページ)

» 2024年04月15日 07時30分 公開
[大澤裕司ITmedia]

親子双方のもやもやを解消

 企画・開発が始まったのは発売の1年ほど前。子どもを持つ社員の声がきっかけになった。開発本部電子文具開発部デジタルプロダクツ課 リーダーの小島沙織さんはこう振り返る。

 「とある社員から、子どもがタブレットで動画を見ているときの困りごとを解決したいという話がありました。子どもが画面に顔を近づけて動画を見ていると、親は『近いよ』といったように注意しますが、何度も注意するのは大変です。子どもも繰り返し注意を受けると、嫌な気持ちになってしまいます。こんな話題が出たことから、親子双方のもやもやを解消する商品として『めまもりん』を企画しました」

 子どもに顔が画面に近いことを言葉以外で伝えつつ、子どもが嫌がるような刺激は避けること。「めまもりん」開発のポイントは、この点に集約された。

 最初に検討したのは、顔と画面の距離が30センチメートルを下回ったらライトがポッと点灯するもの。顔と画面の距離は赤外線距離センサーで測定。赤外線を対象物に反射させ反射光を受光した時の入射角度から対象物との距離を測る。30センチメートルは、公益社団法人日本眼科医会の提唱などを元にした。

タブレットに挟んだ際の使用例。LEDライト発光部の下にあるのが赤外線距離センサーで、向かって右が赤外線発光部レンズ、左が赤外線受光部レンズとなっている

 しかし、サンプルをつくり使ってみたところ、画面に気を取られた状態ではなかなか気づかないことが分かったことから、点滅させることにした。

 同時にブザーも鳴らすことにしたのは、小島さんの上長のアイデアだった。採用の経緯を次のように振り返る。

 「LEDライトの点滅は子どもは気づくことができますが、親は離れたところにいると気づくことができません。上長からこのような点を指摘され、LEDライトの点滅と一緒にブザーを鳴らすことにしました」

 音の刺激が苦手な子どももいることから、ブザーは消音も可能。上長からブザーのアイデアが得られた時に小島さんが盛り込むことにした。消音できることで、屋外など音を出すことを控えたい場所でも使えるようになった。

 ライトが光るとロボットっぽく見えるデザインも、最初の社内会議でほぼ現在と同様のものが提案された。子どもが使うものではあるが、子どもウケするようなデザインを提案しなかった。その理由を小島さんは次のように明かす。

 「子ども向けですから動物の形を模すことなども考えられると思いますが、購入するのは親です。かわいい感じにはしたかったのですが、大人から見てiPhoneやiPadなどに合うと思えるものにしようと考えました」

 デバイスに挟むためのクリップは、スマートフォンやタブレットが挟めることを前提に検討。机に置いても使えるようにするスタンドは、使わない時はクリップに収納できるようになっている。

 机に置いて使えるようにすることも企画時に決めていた。その理由を小島さんは次のように話す。

 「デバイスによっては挟めないものもあることや、タブレットを机やテーブルに平置きして使ったり、デバイスと併用する以外にも机で本を読んだりするケースを想定したからです。『めまもりん』は新規概念の商品なので、あらゆるシーンで幅広く使えるようにするためにクリップで挟む以外の使い方もできるようにしました」

 「めまもりん」の仕様は、開発着手から比較的早期にほぼ固まった。残されたのはブザーの音量など細部の詰めとなった。

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