MUGEN代表の内山氏によれば、M&Aを考え始めたのは、コロナ禍で売り上げが激減してからで、仲介会社を通して売却先を探してもらったという。
「起業して15年ほど頑張ってきて、せっかく軌道に乗っていた時期なのに、コロナ対応のために改めて借り入れをしなければならなかった。結局、何も残らないのかと思うようになった」と、当時の空虚な心境を内山氏は振り返る。
ところが、最初の緊急事態宣言から1年ほどたったころ、森ビルからオファーが来た。23年秋に新しくオープンする、虎ノ門ヒルズステーションタワーと麻布台ヒルズに出店してくれないかという内容だった。
もともと商業施設には出店しない方針の内山氏だったが「緊急事態で飲食店が営業できなくなったり、外食が社会悪と見られたりするような風潮で、こんなにも前向きに考えられる人たちがいたのか」と驚いたという。そして「こういう人たちと新しい世界観がつくれたら」と、心揺さぶられたとも振り返る。
そこで、虎ノ門ヒルズには新業態の立ち寿司「立ち喰いすし魚河岸 山治」と「鮨 おにかい」シリーズの6店目となる「鮨 おにかい×2」を出店。麻布台ヒルズでは、これまでチャレンジしたことがない高価格帯の魚居酒屋を出店してほしいと依頼があった。MUGENは炉端のブランド「なかめのてっぺん」を7店展開し、高価格帯の寿司「鮨 つきうだ」も成功を収めている。そのため、高価格帯の大人が使える海鮮メインの居酒屋もできるだろう、と森ビルがは考えたようだ。
内山氏は「自ら店に入ってイチから業態づくりにかかわればできないこともないが、それを実行してしまうと会社が崩壊するのではないか」と案じたという。そこで、自分の考え方に共感し、株を共同保有して経営を支えてくれるようなパートナーはいないかと、リスクヘッジのためのM&Aを考えるようになった。
MUGENはチェーン店ではなく、さまざまな複数の業態で27店(グループ店を合わせれば29店)を展開しており、上場して資金の調達は向かないと、内山氏は判断した。
「MUGENの大切にしてきた経営理念に共感して、一緒になって考えてサポートしてくれる」。そんな都合の良いパートナーが現われるのかと、内山氏はあまり期待していなかった。ところが、実際には3社がM&Aを希望してきた。
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