「東京湾アクアライン」6車線にすれば“渋滞”は解消するのか 課題は他にある高根英幸 「クルマのミライ」(2/5 ページ)

» 2024年04月19日 06時00分 公開
[高根英幸ITmedia]

アクアライン建設の直接的なメリットと間接的なメリット

 東京湾アクアラインは、建設が始まる前、実に20年間も研究や検討がされた。つまり、1964年に東京オリンピックが開催され、その数年後には東京湾横断道路という構想が始まっていたことになる。

 そして80年代後半には着工されたのだが、当時は首都高速湾岸線の東京ー千葉区間ですら全線開通していなかった(89年に東関東自動車道と接続)のに、早くもさらに長い海底トンネルを組み合わせた東京湾横断道路の建設が始まっていたことになる。

 当時はインターネットもなく、情報が乏しい時代だったので、東京湾横断道路の計画や建設については新聞などで報じられた程度で、一般にはほとんど知られていなかった。

 首都高湾岸線の東京港トンネルについては、80年に開通した海底トンネルとして話題になり、当初は走行するのも便利さより珍しさが勝っていた時代である。その頃には着々と東京湾横断道路の開通に向けた工事が進められていたのだ。

 現在、トンネルをシールドマシンで掘削していくシールド工法はトンネル掘削工事では一般的とされているが、アクアラインの計画時には最新の工法であり、実現に不可欠な技術として導入された。当初から困難が予想された挑戦的な計画だった。

海ほたるPAにモニュメントとして置かれている巨大なシールドマシンの「カッターフェイス」と呼ばれる掘削を行う器具

 前述の海ほたるPAについても、直接海底トンネルと橋を連続的に結ぶのは構造的にも難しく、中間施設としての役割も兼ねて建設されたものだった。

 こうした技術的に高度な建築物は、日本の道路建設技術の高さを証明するものであり、鉄道やビル、ダムなどと併せて日本の建設技術の見本としても機能しているのである。

 フェリーに代わって短時間で自由に行き来できることや、木更津周辺から高速バスで都心への通勤を可能にしたことが直接的なメリットであれば、建築技術の高さを証明するというのは間接的なメリットと言えるだろう。

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