「東京湾アクアライン」6車線にすれば“渋滞”は解消するのか 課題は他にある高根英幸 「クルマのミライ」(5/5 ページ)

» 2024年04月19日 06時00分 公開
[高根英幸ITmedia]
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ドライバーへの渋滞対策の周知も重要

 渋滞のポイントを見ると、海ほたるPAだけでなく、やはり勾配のある地点で渋滞が発生している。勾配部分で渋滞が起きるのは、単純に車間距離が不足しているドライバーが多いからだ。

 特にほぼ直線路が続くアクアラインでは、前走車を見て追従していくドライバーは車間距離を詰めてしまいやすい。

高速道路を走行する車両の群れ。これは渋滞しているのではなく、時速80キロで巡行している状態。大型連休時には、こんな状態であれば追突事故が起こり渋滞が発生するのは当然だ

 合流区間でも車間距離を取れば渋滞が起きにくく、合流部分の先端でファスナー合流すればスムーズな合流ができる。しかしスムーズな合流ができるか不安に感じ、その前に合流してしまおうというドライバーが合流地点の根本付近で合流しようとすることで、さらなる渋滞を生んでいる。これに気付いていないドライバーが多いことを何とかした方がいい。

 ACC(前走車追従機能付きクルーズコントロール)の普及により、車間距離を維持できる環境も広がりつつあるが、依然として車間距離が短めなドライバーを目にすることが非常に多い。それが渋滞や追突事故を起こす大きな原因であることを、もっと行政はアピールするべきだろう。

(画像提供:ゲッティイメージズ)

 コロナ禍で高速バスの利用客がガタ落ちしたようだが、最近は戻っているようだ。通勤が快適であるアクアラインバス通勤の需要は根強い。

 バスターミナル構想「木更津アクアステーション計画」というものも存在している。これはアクアラインの料金所がある木更津金田付近にバスステーションを設け、さまざまな行き先のバスに乗り継げるようなハブ機能をもたせるという計画だ。バス利用の利便性を高めるものだが、実現には周辺の渋滞改善も必要だろう。

 日本の少子高齢化や人口減少に対してどう対策していくか、という課題は付いて回ることになるが、木更津周辺はその辺りに対しても積極的に見える。

(画像提供:ゲッティイメージズ)

 東京湾アクアラインには、現在の日本の道路交通の縮図ともいえる要素が凝縮している。神奈川県の湾岸地区はこのところ道路網の整備が進み、渋滞解消へ着実に進歩しているようだ。千葉県の道路整備が進むことで、いっそう快適で安全な道路交通を実現し、経済損失を抑えることが、物流の効率化や消費を促し、経済を活性化することにつながるだろう。

筆者プロフィール:高根英幸

 芝浦工業大学機械工学部卒。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。これまで自動車雑誌数誌でメインライターを務め、テスターとして公道やサーキットでの試乗、レース参戦を経験。現在は日経Automotive、モーターファンイラストレーテッド、クラシックミニマガジンなど自動車雑誌のほか、Web媒体ではベストカーWeb、日経X TECH、ITmedia ビジネスオンライン、ビジネス+IT、MONOist、Responseなどに寄稿中。著書に「エコカー技術の最前線」(SBクリエイティブ社刊)、「メカニズム基礎講座パワートレーン編」(日経BP社刊)などがある。近著は「きちんと知りたい! 電気自動車用パワーユニットの必須知識」(日刊工業新聞社刊)、「ロードバイクの素材と構造の進化」(グランプリ出版刊)。


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