ハイブリッドが当面の“現実解”である理由 勝者はトヨタだけではない高根英幸 「クルマのミライ」(1/5 ページ)

» 2024年03月12日 07時00分 公開
[高根英幸ITmedia]

 欧州や米国でEVシフトに急ブレーキがかかっている。着実に販売台数は増えているが、とても2030年、35年に完全にEVだけにするのは無理であることに、行政も自動車メーカーも気付いたのだ。

 いや自動車メーカーはとっくに気付いていながら、ユーザーの購入意欲をあおるために利用していた節もある。環境への意識の高さをアピールする道具として利用していた欧州メーカーもありそうだ。

 実際、EVが環境にいいクルマであるという根拠は薄い。排ガスを出さないのは事実だが、CO2を出さないゼロエミッションだというのは走行中という限られた領域だけだ。再生可能エネルギーなら電力もCO2フリーだと言われるが、ソーラーパネルも風力発電も設置して発電するまでにCO2をたくさん出す。

 また充電を短時間に済ませられる急速充電は、バッテリーの劣化を招くだけでなく、電力も無駄にする。いくら電導率の高いケーブルを使っても、大電流を流せばケーブルは発熱し冷却する必要も出てくる。その熱エネルギーは電力が変化したものだから、それだけ電気が無駄に消費されていることにもなるのだ。

EVはバッテリーを大量に搭載する必要があり、その原料の調達には安全保障問題や環境問題も絡んでくる。アーリーアダプターに行き渡った今、販売が失速するのも当然だ

 ガソリンエンジン車であれば、急いで燃料を補充しようとしても、周囲に飛び散らせたりこぼしたりすることなどない。火災の危険もあるから当然だが、燃料自体を無駄にすることがほとんどないのだ。

 普通充電を利用しようにも、一晩で充電できる量は限られている。しかも大容量のバッテリーは日常では使いきれず、その日に使った分を普通充電で補うだけ。つまり無駄に大容量のバッテリーを運んでいることになる。

 そう考えると、少なくともバッテリーのエネルギー密度や生産とリサイクルの環境負荷が改善されるまでは、1台当たりのバッテリーは小さい方がいいのだ。したがって現時点では、エンジンで発電してモーター駆動で走行する方式のシリーズハイブリッドが最も現実的なのである。

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