「東京湾アクアライン」6車線にすれば“渋滞”は解消するのか 課題は他にある高根英幸 「クルマのミライ」(3/5 ページ)

» 2024年04月19日 06時00分 公開
[高根英幸ITmedia]

渋滞の名所となった理由、解消策はあるか

 実はアクアラインには、鉄道やモノレールも載せる計画が当初はあったらしい。しかしその場合はシールド工法ではなく、コンクリート製の躯体(くたい)を作り、それを連結させて海中に設置する沈埋構造にする必要があった。

 建設費や工期、工事の困難さを考えると、鉄道やモノレールの需要はそこまで見込めず、バスで十分代替できるという判断に至ったようだ。その判断はおそらく正しかったのだと思う。

 結果として、木更津からアクアラインを使って高速バスで都内へ行く通勤が人気となっている。満員電車による通勤から解放されたと喜ぶ会社員の声も多く聞くが、千葉から都心への通勤電車の混雑緩和にも役立っている可能性がある。

 しかし渋滞している週末は、交通としての機能を著しく低下させてしまう。そのため、2023年7月には渋滞解消策の実証実験としてロードプライシングも導入され、週末と平日では通行料金に差が付けられるようになった。それでも、週末のみ1.5倍の1200円に引き上げられた程度である。

 これは「アクアラインは安い」と思って利用するドライバーが多いことから、渋滞が発生する週末に料金を引き上げることで走行台数を減らす効果を狙ったものだ。

 しかし実際にはアクアラインを通って千葉県に向かうドライバーは、アクアラインを走ることが目的ではなく、その先にある観光スポットやアウトレットモールなどで楽しむことを目的に利用するのだから、少々の価格変動ではアクアラインの利用を諦めることはないだろう。

 少なくとも木更津から東関東自動車道や京葉道路を使って東京に戻る料金(市川ICまで普通車で1600円)以上に値上げしなければ、渋滞は解消しないはずだ。それは東京ディズニーリゾートが値上げを繰り返しても来場者が殺到しているのと同じ原理だ。他に行くより満足度が高く、お得なのである。

海ほたるPAは東京湾の人工島に作られている。立体駐車場と店舗が積み重ねられた構造はフェリーにも似ている

 木更津周辺の観光スポットやレジャー施設だけでなく、アクアライン自体にも魅力がある。渋滞していなければ海上を走るのはわずかな時間だが、その眺めは壮観だ。また、海ほたるは360度が海に囲まれた人工島のPAであり、デッキや飲食店、土産物や雑貨などの販売店を備えた施設である。

 その雰囲気はさながら客船のようでもあるから、さらなる充実化によって需要を盛り上げることもできそうだ。ただ現時点で、週末は渋滞と駐車スペース不足が起こっているから、抜本的な改善をしなければますます混雑することになる。

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