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「PBR優良企業」の4つの共通点とは 財務・非財務の経営管理手法ROIC経営が企業を変える(3/3 ページ)

» 2024年04月26日 08時00分 公開
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優良企業は経営管理の基盤をどう整備しているのか

 最後に、優良企業が実践している経営管理の基盤について紹介する。なかなかトップダウンが有効に機能しない日本において、グループ横断のITシステムの統合はかなりハードルが高い。

 果たして、優良企業はどのようにITシステムの統合を図っているのか。ROIC経営調査の結果を見ると、意外にも優良企業はITシステムの統合によって経営管理を成功させているわけではないことが明らかになった。ITシステムの統合には相当なハードルがあり、莫大な金と時間がかかる。しかし、経営管理は待ってくれない。そんな中、優良企業が着実に実行していたのが、データマネジメントプロセスの整備・浸透であった。

 ITシステムそのものを統合するのではなく、事業連結カットでROICや、ROICの改善に有効な個別KPIをモニタリングするため、グループ横断でコード統一に向け、いや、コード統一というよりコード変換を実現するため、データマネジメントプロセスの整備を徹底させているのだ。

図8:データマネジメントプロセスの整備状況

 経営管理の基盤として整備しているのは、データマネジメントプロセスの導入だけではなく、整えられたデータを活用する組織の整備にも、優良企業は注力している。優良企業の79.7%(※)がFP&A(管理会計)やBICC(Business Intelligence Competency Center)といった専門組織を整備している。

 これらの専門組織は、データ収集、集計、レポート作成などのサービスを事業部門に対して提供するにとどまらず、データ分析サービスの提供を通じて、事業の改善点の特定や、改善策の検討にまで至っている(図9参照)。

(※)十分にできている:46.4%と、一部できている36.2%の計

図9:FP&A等の専門組織のサービス提供状況

 ある電機メーカーでは、データマネジメントプロセスの導入をミッションとしたDM(データマネジメント)統括組織をCIO直下に設置するとともに、FP&A統括組織をCFO直下に設置し、両組織が連携を図りながらデータドリブン経営を推進している。

 FP&A統括組織が、各事業部と協議し、事業固有の個別KPIの設定と、そのKPIのモニタリングに必要なデータを特定する。モニタリングに必要なデータの集計が可能となるよう、DM統括組織は、データソースの特定と、複数のITシステムに分散されているデータの集計が可能となるようにマスタ整備などを推進する。

 両者の役割遂行に求められる人材要件が異なるため、2つの統括組織を整備、推進しているが、いわゆるビジネスとITの両方の経験をもつメンバーは、2つの統括組織を兼務する形で、統括組織の融合を担っている。

 この2つの統括組織が整備されて以降、事業部門と経営層の対話が促進された。単なる結果報告や、コミットさせられるだけの経営会議から、建設的な議論の場へと、経営会議が変わったという。

 データマネジメントプロセスを整備し、FP&Aのような専門組織を整備していると回答した優良企業の中でも、このような経営管理が行われているのであろう。

 全3回でお届けする「ROIC経営が企業を変える」シリーズの最終回では、高PBR実現に向け、企業内に存在する障壁とその処方箋を紹介する。

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