政府によると、物流分野で十分な対策が講じられない場合、24年度に輸送能力が14%、30年度には34%不足すると推計されている。とはいえ、単に労働時間を規制し、高速道路の制限速度を引き上げるだけではあまりに表層的な対症療法と言わざるを得ない。では、業界に根深い長時間労働が改善されない原因は何なのだろうか。
厚生労働省の調査によると、トラックドライバーにおいて長時間労働がまん延し、改正法を順守することが困難な理由として次のような項目が挙げられている。
このような点から根本解決を図らないことには、業界の長時間労働傾向と人手不足は変わらないであろう。
実際、運送業において早期から2024年問題に対策を取った企業では、次のような施策を実施し、残業時間や待機時間、工数の削減につながっている。
課題と解決策を見る限り、運送会社単体で対策をとることには限界がある。運送会社に依頼する荷主側も巻き込んだ形で協力体制を築き、双方が仕事をしやすい環境を整備することが重要だ。
そして適正価格と適正納期で運送を依頼し、滞りない流通を実現するためにも、最終製品への価格転嫁や消費者への理解促進も含めた抜本的な対策が求められるところだ。
なお、物流・運送業の中でも「バス業界」の工夫については、別記事「60歳の消防士がバス運転手に? 「2024年問題」で存続が危ないバス業界、救いの一手はあるか」にて紹介している。
記事の後編(5月9日公開予定)では建設業界について考察していく。
働き方改革総合研究所株式会社 代表取締役
早稲田大学卒業後、複数の上場企業で事業企画、営業管理職、コンサルタント、人事採用担当職などを歴任。2007年、働き方改革総合研究所株式会社設立。「労働環境改善による業績および従業員エンゲージメント向上支援」「ビジネスと労務関連のトラブル解決支援」「炎上予防とレピュテーション改善支援」を手掛ける。各種メディアで労働問題、ハラスメント、炎上トラブルについてコメント。厚生労働省ハラスメント対策企画委員。
著書に『ワタミの失敗〜「善意の会社」がブラック企業と呼ばれた構造』(KADOKAWA)、『問題社員の正しい辞めさせ方』(リチェンジ)他多数。最新刊『炎上回避マニュアル』(徳間書店)、最新監修書『令和版 新社会人が本当に知りたいビジネスマナー大全』(KADOKAWA)発売中。
11月22日に新刊『「部下の気持ちがわからない」と思ったら読む本』(ハーパーコリンズ・ジャパン)発売。
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