さまざまなメディアにおいて「2024年問題」が取り沙汰されている。2024年4月から適用される働き方改革関連法によって生じる諸問題を総称したもので、とりわけ「物流・運送業界」「建設業界」「医療業界」に大きな影響をもたらすことが危惧されている。
この記事では、2024年問題に直面する物流・運送業界の中でも、語られることの少ないバス業界が直面する危機について取り上げる。
その前になぜ、この3業界だけ取り立てて影響が及ぶのか。まずはその背景事情から解説していこう。
わが国が長年にわたって直面している「少子高齢化」「労働人口減少」「長時間労働の慢性化」「育児と仕事の両立」「ワーク・ライフ・バランスの実現」といった諸問題に対処するため、政府は18年に「働き方改革関連法」(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)を公布。史上初めて、労働時間に上限規制を設けたり、有休取得を義務化したりするなど、国を挙げて労働環境改善に取り組んでいるのはご存じの通りだ。
これらのうち、「時間外労働の上限規制」については最も早期に実施され、大企業は19年4月1日から、中小企業も20年4月1日から施行されている。
ただしこのとき一部業種では、業務内容の特性上、長時間労働になりやすい業種であることから、是正には時間がかかると判断され適用が5年間猶予されていた。
その「一部業種」こそ、冒頭で挙げた「物流・運送業界」「建設業界」「医療業界」。これらの業種に対する適用猶予が終了するのが今年、2024年3月31日までであり、4月1日以降は他業界と同様に、時間外労働時間の年間上限が制限されることになるのだ。
いずれも長時間労働が常態化している業種であるから、労働時間の上限規制はドライバーや建築作業員、医師などにとって労働環境改善につながるはずだ。
しかし、一人当たりの労働者が合法的に働ける時間が減ってしまうことにより、同じ業務量や売り上げを維持しようとするなら、事業者側はこれまで以上に多くの人員を確保しなければならなくなる。この構造が、人手不足に苦しむ各社を直撃しているのだ。
その中でも「物流・運送業」といえばトラックドライバーを真っ先に想起される方が多いかもしれないが、本記事では業界の中であまり語られる機会がない「バス事業者」に焦点を当て、業界を取り巻く現状と、対抗すべく奮闘する各社の事例を紹介していきたい。
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