物流業界における「2024年問題」はすぐそこまで迫っている。この問題を克服するためには物流業の生産性向上以外の道はない。ロジスティクス・コンサルタントの仙石惠一が、運送業はもちろん、間接的に物流に携わる読者に向けて基本からノウハウを解説する
皆さまが勤務する工場では、トラックを利用する物流が多いのではないだろうか? 製品に必要な資材をトラック輸送で調達し、生産した製品をトラック輸送でお客さまのもとへと届ける、これが一般的なパターンだろう。
その時にトラックの積載効率を最大限にできるかどうかは、「荷姿モジュール」にかかっているといっても過言ではない。そこで今回は、トラックの荷台にぴったりとはまるような荷姿モジュールを考えていきたい。理屈はそれほど難しくはない。
荷姿モジュールとは、積み荷の荷姿(にすがた)を標準化させる考え方である。一番よく使うトラックの荷台のサイズを「輪切り」にした荷姿を考えていく。一般的に使われる10トントラックを例に考えてみよう。メーカーによって多少の差はあるが、荷台のサイズはおおむね長さ9.2メートル、幅2.4メートル、高さ2.4メートルといったところだろう。
これの輪切りを作ってみよう。1つの積載単位として幅1.3メートル、奥行き0.75メートル、高さ1.1メートルというモジュールが考えられる。パレットを使用する場合、その厚み0.1メートルを考慮する必要があるため、実質的には高さ1.0メートルが限界ということになる。
もし積載単位をこのモジュールとした場合、実際にトラックには42個積載できることになる。トラックの長手方向に7個、幅方向に3個、高さ方向に2個というイメージだ。
この積載モジュールを基準にさらに小さく輪切りにしていくと、最小荷姿モジュールである箱のサイズが決まってくる。箱のサイズは何種類か必要と思われるが、その設定のポイントはお互い「積み重ねができること」である。
そしてパレットのサイズについて。日本では1.1メートル四方のパレットが主流であるが、物流効率化を追求するならこのサイズにこだわる必要はない。「トラックの幅方向には2個積む」という発想も同様である。先に挙げたモジュールでは3個積載することが前提だ。固定観念を外すことが重要である。
荷姿モジュールとは、輸送時に積載ロスが発生しないサイズの荷姿をつくりこむことである。物流は「最初が肝心」だ。工場内レイアウトでは、物流を考慮しなければずっと工程間運搬というムダを出し続けることになる。それと同様に、輸送を考慮しない荷姿は毎度輸送ロスを発生し続けることになるのである。輸送ロスを発生させない荷姿はどのようなものか。その要点は以下の6つである。
1つ目については、先に解説した荷姿モジュール設定で解決することができる。2つ目のピンホールとは、パレットに箱を積んだ状態で中心部に「穴」ができる現象を示す言葉である。これは荷姿モジュールの約14%程度を占め、製品ではない「空気」を運ぶことになってしまう輸送ロスの典型である。これも荷姿モジュールを設定する際に排除することが肝要である。
3つ目については特に通箱(かよいばこ)使用時に考慮すべき事項である。空になった容器は回収が必要だが、圧縮不可能な容器は中に「空気」を入れて運ぶようなことになってしまう。これはあまりにも不合理ではないだろうか。容器は圧縮可能にすることで回収コストの削減と容器保管スペースの削減に寄与できるのだ。
4つ目も輸送時に「付加価値を生まない」部分である。輸送コストを考えるとパレットは極力使わずに済ませたい。トラック積載時の荷役効率を考慮してパレットを使う場合でも、数とサイズは最小限にすべきである。フォークを差し込むフォーク差込口一体型の容器の場合、その部分については同じく最小限としたい。
5つ目は言うまでもないことである。最近では容器内充填率を低下させない製品設計を考えるメーカーも出てきている。物流効率を考慮した製品設計への取り組みだ。ここまで取り組んでいる会社があることも知っておいてほしい。
そして最後の6つ目である。段ボール荷姿や製品保護のポリ袋や発泡スチロールなど、使用後に発生するゴミが問題になっている。これらのゴミを発生させない荷姿の研究は常に行われていると思われる。新製品立ち上げ時にはぜひ前モデルよりもゴミ発生率の小さなエコ荷姿をつくっていこう。
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