食のサブスクリプションサービスなどを展開するオイシックス・ラ・大地(東京都品川区)。有機・特別栽培の農産物を使用し、調理の時短にこだわったミールキット「Kit Oisix」などが支持を集め、会員数は合計で50万人を超える。
同社は「サステナブルリテール」を掲げ、ビジネスの持続的な成長と環境負荷低減の両立を目指している。この取り組みの実現をデジタルの文脈から支えるのが、2023年に設置したData Management Office(DMO)という部署だ。
滞留在庫数、廃棄数を大きく左右する需要予測にAIを取り入れたり、収益データを全社員が自由に閲覧できる状態を整えたりすることで確かな効果が出ているという。
オイシックス・ラ・大地がデジタル活用で得た知見とは何か。DMO立ち上げ責任者である、中野高文氏(Data Management Office室長)に聞いた。
中野氏はアドテクノロジー企業、データ分析のプラットフォームを提供する米DataRobotを経て、オイシックス・ラ・大地に入社した。データサイエンティストとして培ってきた経験を生かし、23年8月にDMOを立ち上げた。DMOは全社的なデータ活用を推進し、意思決定とサービス改善を迅速化させることを目的としている。
立ち上げからこれまでに注力した分野は「データを誰でも使えるようにする」ことと、「AI活用による高度なデータ分析の実現」だと、中野氏は話す。
――DMOを立ち上げた目的について教えてください。
これまでは社内の本当に一部の人しかデータを扱うことができませんでした。「こういうデータが欲しいので出してください」と該当部署に依頼して、Excelで出力してもらってやっと扱えるといった環境でした。
誰もが簡単にデータを扱えるようにすることで、正しい意思決定をよりスピード感を持って行える環境をつくりたいと思っています。
またLLM(大規模言語学習モデル)、機械学習の技術を使って解決できる食の課題はたくさんあると思っております。これらを解決することも目的です。
――「データを誰でも使えるようにするための環境整備」では、どのような取り組みを行ったのでしょうか。
まずはデータ分析のプラットフォームとなるSaaSを導入し、誰でも自由に売り上げや販促費などのデータを閲覧できる環境を整備しました。しかしツールを導入したからといって全ての問題が解決するわけではありません。ツールを使える人材を育成する必要があるのも難しいところです。
そのため、全社向けのデータリテラシー講座を実施しました。いくつかのレベルのトレーニングも考えていますが、まずは一番簡単な、ビジネスレベルで必要な最低限の統計の知識が身に付く講座を受講してもらったところです。
――社内で特に重要視している指標やデータはあるのでしょうか。
当社は生産者から食材を調達し、消費者までをエンド・ツー・エンドでつなぐビジネスモデルなので、単独の部門の利益ばかりを見るだけでなく、サプライチェーン全体の数字を見ることが非常に重要です。この全体の数字を可視化することがわれわれの大きなミッションです。
調達、物流、売り場の各部門でそれぞれコスト削減に挑んでいても、会社全体としてそれで良いかというと違います。例えば売り場で売ろう売ろうとして頑張るほど、実は滞留在庫がたまっていて、販促費や在庫の管理費が上がっているという状況も起こり得ます。
だからこそ各部門の収支を横断的に見て、会社全体としてどうあるべきかを理解した上で意思決定できるようなものをつくろうとしています。
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