物流業界における「2024年問題」はすぐそこまで迫っている。この問題を克服するためには物流業の生産性向上以外の道はない。ロジスティクス・コンサルタントの仙石惠一が、運送業はもちろん、間接的に物流に携わる読者に向けて基本からノウハウを解説する
皆さまの会社の工場や倉庫でも、フォークリフトをきっと使っていることだろう。そこで一つ質問をしてみたい。「フォークリフトは何のための機械ですか?」と。
筆者はいろいろなところでこの質問をする。最も多く返ってくる回答は「運搬のための機械」という答えだ。確かに工場や倉庫の中で、フォークリフトがものを運搬している光景をよく見かけるので「運搬機械」という認識が頭の中にあるのだろう。
しかし、この回答は正解ではない。フォークリフトは「荷役(にやく)のための機械」である。つまり、重いものを上げ下げする、棚に出し入れする、トラックから荷降ろしするなどの荷役行為のために使う機械という考え方が正しい。
たまたまフォークリフトにはタイヤがついているので、荷役のついでに離れたところまで運んでしまえば便利だという発想から、いつの間にか「運搬のための機械」という認識になってしまったようである。
フォークリフトは荷役のための機械であることを認識していただいた上で、物流に携わる皆さまに、以下の心掛けと効率改善策を紹介したい。
フォークリフトは安全の観点から、工場・倉庫内ではできるだけ使わないことが望ましい。フォークリフトに起因する災害として多いものが転倒事故だ。具体的には、フォークリフトの転倒によって運転者が車両の下敷きになる、外に投げ出されるなどの事故のことを指す。過去の事例からも、万一下敷きになった場合には死亡事故となる確率が極めて高いことが分かっている。
走行速度の出し過ぎや、車体がバランスを崩しやすい操作が転倒の原因とされている。丁寧に操作すれば防げるが、慣れてくるとどうしても操作が荒くなることが問題だ。
荷物の落下事故も見過ごせない。フォークリフトの操作中に荷物がパレットごと落下したり、パレットに積載した荷物が落下したりする事故が発生している。その荷物が人に当たることで、重大な災害につながりかねない。このような事故が年間2000件ほど発生しているのだ。従って、フォークリフトを使う場合には入念な安全管理を施したうえで実行することを心掛けたい。
次に、フォークリフトの稼働を分析してみてもらいたい。「えっ! フォークリフトを追いかけていくの?」と、どうやったらいいのか疑問に思う方も多いかもしれない。フォークリフトに補助席を付けて同乗調査を行うことも考えられるが、安全上の問題から好ましくない。
そこで、フォークリフトの稼働分析には「ワークサンプリング」を活用する。ワークサンプリングとは、1分おきなどの一定間隔でフォークリフトを観察し、その瞬間にどのような作業を実施していたかを把握する手法のことをいう。
この手法で大体の稼働状況は把握できるので、工場・倉庫内の定点に立って複数台のフォークリフトを同時に観測しよう。その時に稼働状況で特に注意すべき点は以下の3点だ。
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