物流業界における「2024年問題」はすぐそこまで迫っている。この問題を克服するためには物流業の生産性向上以外の道はない。ロジスティクス・コンサルタントの仙石惠一が、運送業はもちろん、間接的に物流に携わる読者に向けて基本からノウハウを解説する
物流はよく宝の山だといわれる。まだまだ改善が進んでおらず「改善という宝」が埋もれているからだ。一方で、その宝の山を見つけるためには、できるだけ多くの情報を入手しておく必要がある。そこで、自社の物流にはどのような機能があるのかについて知っておきたい。
物流における機能とは何か。一般的には次のように定義されている。
これらの機能別に、現在実施している物流業務についてどのようなことを実施しているかを洗い出しておきたい。その際、内製かアウトソースかは問わない。整理することで物流情報が頭にインプットされ、物流に関する知識と関心が身につくことだろう。
次に現在かかっている物流コストについて把握しよう。上記で整理した物流機能ごとに、それぞれ年間でいくらの物流コストが発生しているかについて調査していく。
これら以外にも、物流情報を授受するための情報システム費用、物流管理スタッフにかかる人件費なども落とすことなく把握しよう。物流にかかわる費用の中には製造原価に含まれているものもあるだろうが、ここではその中からも抽出することで漏れのないようにすることを心掛けたい。
またできれば調達先が負担している物流費についても、ある程度推計でも良いので把握しておきたい。サプライヤーからの納入品には必ず物流費が含まれている。それがどれくらいかかっているかをつかんでおけば、将来的に調達物流の改善をする際にも役立つ。この物流費も、工場が調達部品費や調達資材費として間接的に支払っているのである。
参考までに、世の中の「売上高物流コスト比率」のデータ推移を以下に紹介する。
これは日本ロジスティクスシステム協会が毎年行っている会員企業に対するアンケート調査結果だ。ただし、この値は各企業で「見えている部分に過ぎない」ということに注意してもらいたい。
運賃や外部倉庫費などといった、対外的な支払い費用という把握しやすいものしかカバーできていない可能性が高い。そのため前述の1〜5に示したようなコストは把握しきれていない可能性が高いことに留意しておきたい。
物流コストを機能別に把握することで、今まで見えていなかったさまざまな問題点に気付くはずだ。思っていた以上に物流コストが発生している業務を発見することもあるだろう。
この気付きが、すなわち宝の山の存在への気付きになる。早速その中に埋まっている宝を掘りたくなるところだが、まずは冷静に優先順位を決めていくと良いだろう。皆さまの会社が製造業であれば、優先度が高いものは生産とつながりの深い項目だ。
工場では生産ラインにおける作業性が、付加価値業務である。これを徹底的に効率化するために、物流サービスを向上させることが必要だ。つまり物流を使って生産ラインの効率化を図ることが求められる。
工場の付加価値業務を効率化できるならば、相応のコストがかかってもやるべきだ。反対に、構内物流工数の削減を先に着手してはならない。なぜなら、その結果として生産ラインへの物流サービスが不十分となり、生産の効率化にブレーキがかかってしまうおそれがあるからだ。
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