神奈川県内の男性会社員は数年前、スイス旅行でレンタカーを借りて驚いた。車の窓ガラスにステッカーが貼ってあり、店員からは「高速代はすでに払ってあります」。実際、高速道路に料金所はなく、自由に乗り降りできた。年間定額制のためだった。
わが国の高速道路の総延長約9200キロに対し、スイスは約1500キロと6分の1程度だが、定額制の年間料金は40スイスフラン(約6870円)。男性は「6800円で1年間走り放題なんて、日本と比べて、うらやましすぎる」と話す。
国交省によると、欧州で乗用車が定額制の国は、スイスをはじめ少なくとも10カ国ある。
ポイントは、無料化ではないということだ。無料化だと、9人が犠牲となった平成24年の中央自動車道笹子トンネル天井板崩落事故以降、深刻化している高速道路の維持管理コストも賄えない。
近藤さんは「定額制なら一円の国費の出費もなく、政治の決断だけで今すぐにでも実現できる」と話す。
岸田文雄首相は令和4年10月の参院予算委で、同書について「大変興味深く読ませていただいた」とした上で「ただ、ほかの交通機関とのバランスなど、いろいろと考えなければならない点もある」と述べた。
いまから15年前、政治の決断により高速道路が定額制になったことがあった。(「下」につづく)
主な国の高速道路料金制度(乗用車)
【無料】米国、カナダ、英国、ドイツ、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、デンマーク、スウェーデン、フィンランド、ポーランド、エストニア、キプロス
【有料(距離制など)】日本、韓国、中国、フランス、イタリア、スペイン、ポルトガル、ギリシャ、アイルランド、クロアチア
【有料(定額制)】スイス、オーストリア、チェコ、スロバキア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア、スロベニア、ラトビア、リトアニア
※国土交通省調べ。2023年9月時点。乗用車が無料や定額制の国でも、大型貨物車についてはたとえばドイツとスイスが距離制を、英国が定額制を採用するなどしている。
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