千客万来はもともと2018年、東京都中央卸売市場が築地から豊洲へ移転したタイミングでオープンする予定だった。しかし「すしざんまい」を運営する喜代村など、当初予定していた運営事業者が撤退し、コロナ禍などもあって豊洲移転からかなり遅れたタイミングでのオープンとなった。万葉俱楽部のプレスリリースによると、施設自体の構想は2015年に始まったとあり、10年近くを経ての開業である。
千客万来のコンセプトは「うまさの聖地」。豊洲ならではのローカルフードに加え、全国から集まる「本格・本物の食」を提供するとともに、温泉などさまざまなコンテンツが詰まった施設だ。
後ろ倒しでの開業ながら(ということもあってか)オープン時に各メディアが華々しく扱い、コロナ禍が明けて観光需要が高まっているタイミングでもあることから、順風満帆に思えた千客万来。しかし、間もなくして「インバウン丼」なるワードがSNSなどをにぎわすようになった。
インバウン丼とは、施設内で提供している海鮮丼を「訪日客に特化した、高価な丼」として揶揄(やゆ)した言葉である。千客万来内の店舗が販売している海鮮丼の中には、確かに1杯1万円超のものもあり、そのインパクトもあいまってインバウン丼は即座にネットミーム化した。
果たして1杯数千円〜1万円超の海鮮丼とはどういったものか。施設内でのインバウンド対応などとともに取材しようと考えて先方にコンタクトを取ったが、結論から書くと取材NGを出されてしまった。
まず連絡したのは「江戸辻屋」を運営する辻水産。他メディアの記事で「ボッタクリ丼だと思うんだったら、別にそう思えば良い」といったコメントや、話題になったことが逆にチャンスであり、食べてもらえれば価値を分かってもらえる――といった強気の姿勢を見せていた。
であれば、商品にどのような工夫を凝らしているのか、どのようなターゲット設定をしているのかなどを聞こうとしたものの、断られてしまった。
万葉俱楽部にも連絡したが、インバウンド関連の取材はNGとの返答があった。辻水産にしても、万葉俱楽部にしても、SNSを中心に千客万来が「インバウンド向けの高価な商品が並ぶ施設」という「色」がつきかけている現状に対して、非常にナーバスになっていることが感じられた。
1杯約1万円の“インバウン丼”話題の「千客万来」 現地で見えた、高価でも売れる意外な実情
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