Amazon Goと後発の類似店舗を比較すると、いくつかの違いが見られます。
まず、Amazon Goは多くの生活者に使われているネット通販のAmazonアプリ(日本のアプリでも設定を変えると使用可能)を使用するのに対し、類似店舗の多くは展開企業独自のレジなし決済専用アプリを利用します。
一例として、ダイエーが運営する「イオンフードスタイル横浜西口店」に併設された15坪のコンビニエンスストア「CATCH&GO」も専用アプリを利用します。筆者は5回買い物しましたが、ダイエーとNTTデータがNTTデータ社内の店舗で共同研究してきたこともあり、精度はAmazonのJust Walk Outと大差ない印象です。
残念なのは、開店から半年経った現在も利用者があまり増えていないように見えることです。この例に限らず、専用アプリをダウンロードして登録してもらうハードルの高さは非常に高いものです。
Amazonが当初、Amazon Go専用アプリであったものを店舗展開する過程で普通のAmazonアプリで使えるようにしたように、小売チェーンで利用率の高い既存アプリから利用できるようにすると利用率が上がると考えられます。
現在、日本で外販が多く行われている無人決済店舗システムの仕組みは、JR東日本スタートアップとサインポストの合弁会社として設立されたTOUCH TO GOが提供する「TTG-SENSE」です。
この仕組みはアプリそのものを必ずしも必要としないのが特徴です。
商品を選びとるだけでカウントされて、レジスキャン作業が要らない点は他のサービスと同様ですが、入り口でアプリをかざす必要がありません。一方、最後にセルフレジで交通系ICカードやクレジットカードを使った会計作業があるため、レジなし店舗という括りに入れるのは厳密には異なりますが、スキャンレスであることはAmazon同様です。
新規にアプリをダウンロードして登録する必要がないので、利用者獲得ハードルが低い一方、同じ人物が別日時に利用しても別人として扱われた購買データしか取得できないため、CRM(顧客関係管理)などを複合することは難しくなります。駅や空港など、不特定多数の人が行き来する場所に向いている仕組みと考えます。
中国では、かつてコンテナを使った無人店舗が流行しました。これらの店舗は、自動販売機に近い仕組みで運営されており、入り口のQRコードを「WeChat Pay」や「Alipay」といった決済サービスで読みとってコンテナのロックを解除し、セルフレジで決済するものでした。
コンテナ型無人店舗は、あくまで自動販売機の延長線上にあります。無人店舗には低人件費での運営というメリットがある一方で、デメリットも存在します。例えば、機械トラブルが発生した際の対応の遅れや、顧客が商品について質問したい時に店員がいないことによる不便さなどです。
また、万引のリスクも無人店舗の大きな課題と言えます。Amazon Goを始めとしたレジなし店舗では、AIやセンサーによる監視で万引を防止できている状態ですが、コンテナ型無人店舗で万引を完全に防ぐことは困難です。
そのため、コンテナ型無人店舗の後期には、RFID(Radio Frequency Identification:無線周波数識別)タグを全商品に貼り付けて万引を防止する店が出現しました。しかし、タグおよび貼付けのコストで経費が増加するため普及しませんでした。
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